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平成14年函審第27号
件名

漁船第六十三清美丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年11月14日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第六十三清美丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首上部を圧壊、球状船首部に亀裂を伴う圧損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年10月21日06時40分
 北海道羅臼港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第六十三清美丸
総トン数 19トン
全長 21.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 661キロワット

3 事実の経過
 第六十三清美丸(以下「清美丸」という。)は、刺網漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、刺網の投網の目的で、船首0.6メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成13年10月21日05時00分北海道羅臼港を発し、同港南東方沖合の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、刺網漁の漁期にはいつも01時ごろ羅臼港を出港し、同港沖合の漁場に至って刺網の揚投網を行い、10時ごろ帰航する日帰りの操業を繰り返し、連日の出漁が続いて疲労が蓄積していたうえ、21日が日曜日で水揚げができないことから、投網するだけとして00時過ぎに就寝したのち前示時刻に出港し、睡眠不足の状態となっていた。
 A受審人は、05時45分羅臼港南東方7海里付近の根室海峡の漁場に至り、積んできた刺網2はえを投網した後、06時02分羅臼灯台から151度(真方位、以下同じ。)6.9海里の地点を発進し、同港に向け帰航の途に就いた。
 発進時、A受審人は、いつものように単独で船橋当直に就き、他の乗組員を休息させ、針路を羅臼港に向ける320度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で、操舵室右舷側でいすに腰を掛けて見張りに当たって進行した。
 06時22分ごろA受審人は、羅臼港まで3海里ばかりの地点に差し掛かったとき、睡眠不足により眠気を催すようになったが、同港まであと少しなので我慢できるものと思い、休息中の甲板員を呼んで見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかったので、同じ姿勢で見張りを続けるうち、いつしか居眠りに陥り、羅臼港の南島防波堤南端付近に向首したまま進行中、06時40分羅臼港西防波堤灯台から115度130メートルの地点において、清美丸は、原針路、原速力で、その船首が南島防波堤南端付近東側に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は低潮時であった。
 その結果、清美丸は、船首上部を圧壊したほか、球状船首部に亀裂を伴う圧損を生じたが、僚船に曳航されて羅臼港に入港したのち修理された。

(原因)
 本件防波堤衝突は、北海道羅臼港南東方沖合の漁場から帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、羅臼港の南島防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、羅臼港南東方沖合の漁場から同港に向け自動操舵により帰航中、睡眠不足により眠気を催した場合、居眠り運航になるおそれがあるから、休息中の甲板員を呼んで見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、同港まであと少しなので我慢できるものと思い、休息中の甲板員を呼んで見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、居眠り運航となり羅臼港の南島防波堤南端付近に向首進行して同防波堤との衝突を招き、清美丸の船首上部を圧壊したほか、球状船首部に亀裂を伴う圧損を生じさせるに至った。





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