(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年4月20日12時55分
沖縄県那覇港西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船将丸 |
遊漁船かもめ |
総トン数 |
2.25トン |
2.2トン |
登録長 |
8.88メートル |
8.28メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
153キロワット |
88キロワット |
3 事実の経過
将丸は、まぐろ一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.47メートル船尾1.13メートルの喫水をもって、平成14年4月20日11時30分沖縄県糸満漁港を発し、同県伊江島西方沖合の漁場に向かった。
12時05分A受審人は、ムーキ灯標から235度(真方位、以下同じ。)740メートルの地点で、針路を353度に定め、機関を全速力前進にかけて8.3ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
12時40分半A受審人は、神山島灯台から156度2.6海里の地点に達したとき、正船首2.0海里のところにかもめを初めて視認したが、200メートルばかりに接近したら、右転してかもめを替わすつもりで、椅子に座り背中を操舵室後部の壁にもたれた姿勢で見張りに当たっていたところ、同人は18日及び19日は出漁しなかったので疲労はなかったものの、眠気を催すようになったが、立ち上がって居眠り運航の防止措置をとることなく続航しているうち、いつしか居眠りに陥った。
A受審人は、12時52分正船首770メートルにかもめを視認でき、その後、同船と衝突のおそれのある態勢で接近したが、居眠りに陥っていて、そのことに気付かず、同船を避けないで進行し、同時54分半少し前正船首170メートルに接近したが、依然、居眠りに陥っていて、これに気付かず、転舵するなど同船を避けることなく続航した。
12時55分わずか前A受審人は、目覚めて船首至近にかもめを初めて視認したがどうすることもできず、将丸は、12時55分神山島灯台から118度1,760メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その左舷船首がかもめの左舷船尾に前方から15度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力5の南風が吹き、視界は良好であった。
また、かもめは、FRP製遊漁船で、B受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、4月20日08時00分那覇港を発し、神山島東方から北西方にかけて釣りを行った。
12時05分B受審人は、前示衝突地点付近に至り、長さ約20メートルのロープに結んだシーアンカーを船首から入れ、機関を止め、船首を188度に向けて漂泊を開始し、同人が操舵室後方の左舷側で、同乗者が操舵室後方の右舷側で、それぞれ後方を向き、釣竿を出して釣りを再開した。
B受審人は、12時40分ごろ釣を止め、操舵室後方の左舷側で帰港準備を始めた。
12時52分B受審人は、左舷船首770メートルに、自船に向首した将丸を視認でき、その後、同船が衝突のおそれのある態勢で接近したが、帰港準備に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、そのことに気付かず、シーアンカーを解き放し、機関を始動して前進にかけるなどの衝突を避けるための措置をとることなく、帰港準備を続けた。
B受審人は、12時54分半少し前ふと振り返って船首方を見たところ、将丸を左舷船首170メートルに初めて視認し、60メートルに接近したとき、衝突の危険を感じ、大声で叫び、指笛を吹いたが、かもめは、188度に向首したまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、将丸は、左舷船首外板に擦過傷を生じ、かもめは、左舷船尾外板に亀裂及び船尾のオーニング支柱に曲損を生じた。
(原因)
本件衝突は、那覇港西方沖合において、将丸が、漁場へ向けて北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊中のかもめを避けなかったことによって発生したが、かもめが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、那覇港西方沖合において、漁場へ向けて北上中、椅子に腰掛けて見張りに当たっているうち、眠気を催した場合、立ち上がって居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、まさか居眠りすることはないと思い、立ち上がって居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、正船首方で漂泊中のかもめに気付かず、転舵するなど同船を避けることなく進行して同船との衝突を招き、将丸の左舷船首外板に擦過傷を、かもめの左舷船尾外板に亀裂及び船尾のオーニング支柱に曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、那覇港西方沖合において、漂泊して釣りを行う場合、自船に向首して接近する将丸を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、帰港準備に気を奪われ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、間近になるまで、避航しないまま接近する将丸に気付かず、シーアンカーを解き放し、機関を始動して前進にかけるなどの衝突を避けるための措置をとることなく、帰港準備を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。