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平成14年神審第66号
件名

漁船第二十三金吉丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年10月22日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第二十三金吉丸船長 海技免状:六級海技士(航海)

損害
船首部を圧壊
船長が右鎖骨を骨折

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年2月28日21時00分
 石川県金沢港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十三金吉丸
総トン数 36.78トン
登録長 21.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 529キロワット

3 事実の経過
 第二十三金吉丸(以下「金吉丸」という。)は、沖合底びき網漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、操業の目的で、平成14年2月27日23時00分石川県金沢港を発し、同港西方沖合の漁場に至り、かになど約600キログラムを漁獲し、翌28日水揚げのため帰途についた。
 19時30分A受審人は、美川灯台から300度(真方位、以下同じ。)13.5海里の地点において、針路を金沢港に向く083度に定め、機関を全速力前進にかけ11.5ノットの対地速力とし、乗組員を船首甲板で漁獲物の選別作業に当たらせ、自らは単独の船橋当直に就き、自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、帰港して水揚げを済ませると直ちに出航する日帰り操業を繰り返しており、操業中は、漁労長として、操業を指揮しながら専ら操船に当たり、航海中は、所要時間が約1時間半で短いことから、自ら単独の船橋当直に就くこととしていたので、ほとんど休息を取ることができず、睡眠不足気味になっていた。
 20時10分A受審人は、選別作業が終了して乗組員が休息し、作業灯が消されて前方の見張りが容易になったので、舵輪後方の板張りの台に座り、電気ストーブで暖をとっていたところ、同時34分レーダーで金沢港まで5海里の状況を認めたとき、眠気を催したが、港に近づいているので、何とかがまんできると思い、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を呼んで2人で船橋当直に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとらずに続航し、いつしか居眠りに陥った。
 金吉丸は、A受審人が居眠りしていて金沢港西防波堤に向首したまま接近していることに気付かないで進行し、21時00分金沢港西防波堤灯台から188度80メートルの地点において、原針路原速力のまま、同防波堤に衝突した。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候はほぼ低潮時であった。
 衝突の結果、船首部を圧壊したが、のち修理された。また、A受審人が右鎖骨を骨折した。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、石川県金沢港西方沖合の漁場から同港に向け帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、金沢港西防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、石川県金沢港西方沖合の漁場から同港に向け帰航中、睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を呼んで2人で同当直に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、港に近づいているので、何とかがまんできると思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、金沢港西防波堤に向首進行して同防波堤との衝突を招き、金吉丸の船首部を圧壊させ、自らが右鎖骨を骨折するに至った。





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