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平成14年神審第46号
件名

遊漁船戎丸プレジャーボートつまべにII衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年10月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均、大本直宏、村松雅史)

理事官
清重隆彦

受審人
A 職名:戎丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:つまべにII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
戎丸・・・右舷船首部外板に擦過傷
つまべにII・・・右舷船首部外板に亀裂を伴う損傷
船長と同乗者2人が左手舟状骨を骨折等

原因
戎丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
つまべにII・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、戎丸が、見張り不十分で、漂泊中のつまべにIIを避けなかったことによって発生したが、つまべにIIが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月29日10時40分
 兵庫県東播磨港

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船戎丸 プレジャーボートつまべにII
総トン数 3.0トン  
全長 11.00メートル  
登録長 9.45メートル 4.71メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 169キロワット 18キロワット

3 事実の経過
 戎丸は、船体中央部に操舵室を有するFRP製遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客4人を乗せ、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、釣りの目的で、平成12年7月29日05時30分兵庫県東播磨港の定係地を発し、カンタマ付近と同港内の新島南方で釣りを行ったのち帰途に就いた。
 10時30分A受審人は、東播磨港別府東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から116度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点において、針路を116度に定め、機関を微速力前進にかけ5.0ノットの対地速力とし、操舵輪後方のいすに腰掛けて見張りに当たり、手動操舵により進行した。
 10時37分少し前A受審人は、東防波堤灯台から116度1.2海里の地点に達したとき、正船首方500メートルのところに、つまべにIIを視認することができる状況であったが、周囲に他船が見当たらなかったことから、前路に他船はいないものと思い、船首方の見張りを十分に行わなかったので、つまべにIIの存在に気付かないで続航した。
 A受審人は、つまべにIIに向首したまま接近していることに気付かなかったので、ほとんど移動しないことから漂泊中と分かる同船を避けずに進行し、10時40分東防波堤灯台から116度1.5海里の地点において、戎丸は、原針路原速力のまま、その右舷船首部が、つまべにIIの右舷船首部に、平行に衝突し、乗り上げた。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、付近には微弱な東流があった。
 また、つまべにIIは、船体塗色が青色のFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、知人2人を同乗させ、船首0.5メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、釣りの目的で、同日06時00分東播磨港の定係地を発し、同港付近の釣り場を移動しながら釣りを行った。
 10時20分B受審人は、前示衝突地点付近の釣り場に至り、機関を停止して漂泊し、知人を右舷船首部と左舷中央部とに配置し、自らは右舷船尾部に後方を向いた姿勢で位置し、船体が東方に低速力で圧流されながら、それぞれがさお釣りを再開した。
 10時37分少し前B受審人は、衝突地点において、船首が296度に向いていたとき、正船首方500メートルのところに、戎丸を視認することができる状況であったが、自船は漂泊しているので接近する他船が避けてくれるものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかったので、戎丸の存在に気付かないで釣りを続けた。
 B受審人は、戎丸が自船に向首したまま接近していることに気付かなかったので、持参していた笛を吹くなど、有効な音響による注意喚起信号を行わず、さらに間近に接近しても、機関をかけて移動するなど、衝突を避けるための措置をとらずに漂泊中、10時40分少し前船首部にいた知人の叫び声を聞き、至近に迫った戎丸を初めて認めたものの、どうすることもできず、つまべにIIは、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、戎丸は右舷船首部外板に擦過傷を、つまべにIIは、右舷船首部外板に亀裂を伴う損傷をそれぞれ生じ、B受審人が左手舟状骨を骨折したほか同乗者2人が負傷した。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県東播磨港において、東進中の戎丸が、見張り不十分で、漂泊中のつまべにIIを避けなかったことによって発生したが、つまべにIIが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県東播磨港を定係地に向け東進する場合、つまべにIIを見落とさないよう、船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、周囲に他船が見当たらなかったことから、前路に他船はいないものと思い、船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、つまべにIIの存在に気付かず、漂泊中の同船を避けないまま進行して衝突を招き、戎丸の右舷船首部外板に擦過傷を、つまべにIIの右舷船首部外板に亀裂を伴う損傷をそれぞれ生じさせ、B受審人の左手舟状骨を骨折させたほかつまべにIIの同乗者2人を負傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、兵庫県東播磨港において、漂泊して釣りを行う場合、戎丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船は漂泊しているので接近する他船が避けてくれるものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、戎丸の存在と接近に気付かず、機関をかけて移動するなど、衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けて衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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