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平成13年第二審第31号
件名

プレジャーボートいわさき丸監視船若葉丸引船列衝突事件〔原審広島〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年12月20日

審判庁区分
高等海難審判庁(山崎重勝、田邉行夫、佐和 明、吉澤和彦、山田豊三郎)

理事官
川本 豊

受審人
A 職名:いわさき丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:若葉丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
指定海難関係人
C 職名:若葉丸操舵員

損害
いわさき丸・・・船首部船底に擦過傷
若葉丸・・・右舷前部外板上部に破口等
ヨット部員1人が死亡、1人が右腓骨内果骨折

原因
いわさき丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

二審請求者
補佐人土井三四郎及び同布川勝美

主文

 本件衝突は、いわさき丸が、見張り不十分で、無難に航過する態勢の若葉丸引船列の前路に進出したことによって発生したものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年11月18日17時00分
 広島港第1区金輪島北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートいわさき丸 監視船若葉丸
総トン数 3.50トン
全長 11.90メートル 6.49メートル
2.55メートル 1.83メートル
深さ 0.75メートル 0.66メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 169キロワット 22キロワット
船種船名   競技用ヨット(船名なし)
全長   4.034メートル

3 事実の経過
(1)いわさき丸
 平成元年に竣工した、ヤマハ発動機株式会社(以下「ヤマハ発動機」という。)製造のDX-39H-OA型FRP製プレジャーボートで、船体中央から後方の甲板上に船室及びその上部後方に操舵室を備え、船室の前後は平甲板で、後部甲板上には操舵室の屋根とほぼ同じ高さにオーニングが展張され、船尾端中央のマストにはスパンカーが取り付けられていた。
 前部甲板下は物入れや生簀(いけす)に、後部甲板下は物入れや舵機室にそれぞれなっており、船室下は機関室で、主機として、定格出力時の回転数毎分2,900のヤマハ発動機製MD628KUHディーゼル機関を搭載し、船首部船底形状は凌波性を高めたセミV型ストライプ船型となっていた。
 操舵室内は、右舷側が操縦席、左舷側が船室への通路となっており、操縦席の船首側に舵輪、その右横に機関回転計や潤滑油圧力計などの計器盤、その下方に各種スイッチ盤、同席の右横に主機の回転数増減レバーとクラッチレバー、舵輪前部の棚の上に磁気コンパス及びGPSなどが装備されていたが、レーダーは備えられていなかった。
 操舵室前面は、窓枠によって左右に2分割されたガラス窓で、その右舷側の窓の中央に旋回窓が備えられており、同室左右側面は、船首側の約3分の2の部分がそれぞれ窓枠によって前後に3分割されたガラス窓で、その後方の約3分の1の部分が側壁となっており、また、同室後面は、引戸式の出入口で上半分がガラス窓となっており、操縦席からの前方の見通し状況は良好であった。
(2)若葉丸
 昭和59年に竣工し、船尾に船外機を備えた和船型FRP製ボートで、広島県立安芸南高等学校(以下「安芸南高校」という。)が同県安芸郡坂町から借用し、同校ヨット部が部活動の支援やヨットレースの監視船として使用していたが、航海灯や汽笛などの装備はなく、日没から日出までの間の航行は禁止されていた。
 甲板は、平甲板で、船体中央部付近から後方へ長さ1.6メートルの部分が前後の甲板より0.2メートル高くなっており、その前後の甲板の長さがそれぞれ1.9メートル及び1.0メートルで、船首端の長さ1.0メートルの部分及び船尾端の長さ0.8メートルの部分も甲板より0.3ないし0.2メートル高くなっていた。そして、船首端及び船尾端におけるガンネル上縁の船底からの高さは、それぞれ0.95メートル及び0.58メートルであった。
(3)競技用ヨット(船名なし)
 当時、若葉丸に曳航されていた競技用ヨットは、マスト1本を備えたインターナショナル フライング ジュニア クラス (以下「FJ級」という。)のスループ型FRP製ヨットで、安芸南高校の部活動に使用されていた。
(4)受審人及び指定海難関係人
ア 受審人A
 A受審人は、プレス金型関係の会社を兄と共同で経営し、昭和51年6月に四級小型船舶操縦士の免許を取得し、釣りなどの海洋レジャーの目的で、自己所有船第2いわさき丸又は兄の所有船いわさき丸を運航していた。
イ 受審人B
 B受審人は、平成12年4月安芸南高校に新任教諭として着任し、前任ヨット部顧問の教諭が他校へ転勤したので、教諭Kとともにヨット部顧問となり、同年5月に四級小型船舶操縦士免許を取得したが、それ以前に船舶の運航に関する知識や経験はなかった。
ウ 指定海難関係人C
 C指定海難関係人は、平成12年4月からボランティアとしてそれまでの30数年間のヨット操縦経験を生かし、安芸南高校ヨット部のコーチに就いたが、海技免状を受有しておらず、本件発生当時、四級小型船舶操縦士免許の受験を終え、合否の発表を待っているところであった。
 C指定海難関係人は、B受審人が海技免状を取得したのちもまだ操船やヨットの取扱いに慣れていなかったことから、同受審人と一緒に乗船したときには自ら操船に当たることが多かった。
(5)平成12年度広島県高校新人戦(以下「新人戦」という。)
 新人戦は、広島県高等学校体育連盟ヨット専門部が、財団法人広島県ヨット連盟の平成12年度広島県会長杯とともに共催するヨットレースの一部で、広島港第3区の広島観音マリーナ沖合において、平成12年11月18日に新人戦、翌19日に会長杯が行われることになっており、安芸南高校からは、新人戦の女子FJ級及び男子FJ級のレースに7隻が参加した。
(6)金輪島北部沿岸海域のカキ養殖場
 金輪島の北西から北東にかけての北部沿岸は、陸岸から約300メートルの海域が広島市漁業協同組合のカキ養殖場となっており、同養殖場内には、長さ15メートル幅10メートル水面上の高さ0.7メートルばかりの筏を連結して、1列の長さを200メートル前後としたカキの養殖筏列が多数設置されていた。
 同養殖場北西端の筏は、金輪島北部の送電線用鉄塔(宇品灯台から067.5度(真方位、以下同じ。)1,650メートルの地点の送電線用鉄塔、以下「鉄塔」という。)から300度480メートルの地点に位置し、同筏上に黄色標識灯が備えられており、同筏を北端とする長さ約270メートルの筏列がほぼ南北方向に設置され、その東側に長さ約210メートルの筏列と長さ約150メートルの筏列がそれぞれ約40メートルの間隔でほぼ平行に設置されていた。
 そして、更にその東側には、鉄塔から312度310メートルの地点を西端とする長さ約210メートルの筏列がほぼ東西方向に設置され、同筏列を挟んで北側約60メートルと南側約50メートルのところに、長さ約230メートルの筏列及び長さ170メートルの筏列がそれぞれほぼ平行に設置されており、南北方向の筏列のうち最も東側の筏列と、東西方向の各筏列西端の筏との間の水路幅は、最狭部で約65メートルであった。
(7)本件発生に至った経緯
 いわさき丸は、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年11月18日09時00分広島港第1区丹那町の船溜まりを発し、広島湾宮島瀬戸付近に至って釣りを行ったのち、16時ごろ帰途に就いた。
 A受審人は、金輪島西方沖合に達したとき、このまま定係地に帰って釣れた魚を処理すると暗くなりそうなので、明るいうちに処理しようと思い、折からの北北東風を避けて係留できる同島沿岸のカキ筏に向かった。
 16時30分A受審人は、金輪島北側のほぼ東西方向に3列設置されている筏列のうち、北から2列目の筏列で、西端の筏の南縁中央部に当たる、鉄塔から312度305メートルの地点に船首から係留索をとって約5メートル伸ばし、機関を停止して船首を北北東風に立てた状態で係留し、その後、友人とともに船尾甲板上で魚の処理にとりかかった。
 A受審人は、魚の処理を終えて帰港することとし、友人を船室で休ませ、操舵室に入ったとき、これまでの航行中に浴びた波しぶきが乾燥し、窓ガラスに付着した塩分によって前方の見通しが悪くなっていたが、旋回窓を通して狭い範囲ながらも船首方が良く見えたことから、窓ガラスに付着した塩分を拭き取らないまま、16時58分機関を始動して微速力前進にかけ、船首が筏に接したところでクラッチを中立とし、急いで船首に行って係留索を筏から外したのち、操舵室に戻った。
 16時58分半A受審人は、鉄塔から311度300メートルの地点で、左舵をとってクラッチを後進に入れ、船尾を左舷に振りながら微速力で後退を始め、係留していた筏の南西端から南西方へ30メートルばかり離れたところで右舵をとり、船尾を右舷に振りながら風にも流されて3ノット(対地速力、以下同じ。)の平均速力で後退を続けた。
 A受審人は、間もなくクラッチを中立とし、16時59分少し過ぎ筏列間の水路のほぼ中央付近に当たる、鉄塔から299度320メートルの地点に達したとき、ちょうど船首が同水路中央部を北上するときの目標となる宇品大橋の方を向いたので、クラッチを前進に入れ、針路を同方向の015度に定めて発進した。
 発進したとき、A受審人は、左舷船首33度140メートルのところから、FJ級ヨット3隻を曳航した若葉丸が自船の前路に向かって低速力で接近していたが、操舵室の窓ガラスに付着した塩分を拭き取らずに筏から発航し、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、旋回窓を通して見える狭い範囲外から接近する同引船列を見落したまま、その後、機関の回転数を徐々に上げながら進行した。
 16時59分半A受審人は、鉄塔から301度325メートルの地点に達し、自船の速力が4ノットに上がったとき、引船列先頭の若葉丸が左舷船首22度135メートルとなり、自船がこれ以上増速しなければ、若葉丸及びその最後部のヨットが自船の船首方90ないし60メートルばかりのところを無難に航過する状況であったが、依然として見張り不十分で、この状況に気付かず、更に機関の回転数を上げながら進行した。
 A受審人は、17時00分少し前鉄塔から310度345メートルの地点に達したとき、自船の速力が10ノットに上がっており、更に増速すると、左舷船首16度90メートルとなった若葉丸引船列の前路に向かって衝突の危険がある態勢で進出する状況となったが、依然としてこれに気付かず、増速を続けながら進行し、17時00分鉄塔から323.5度400メートルの地点において、いわさき丸は、原針路のまま、15.2ノットの速力で、その船首が若葉丸の右舷前部に後方から55度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、日没時刻は17時05分であった。
 A受審人は、船外からの悲鳴を聞くと同時に衝撃を感じ、直ちにクラッチを切って操舵室の外に出たところ、自船の船首が若葉丸の右舷前部に乗り揚がって停止しているのを認め、事後の措置に当たった。
 また、若葉丸は、B受審人及びC指定海難関係人の2人が乗り組み、船首0.05メートル船尾0.20メートルの喫水をもって、新人戦に参加する安芸南高校のFJ級ヨット3隻を曳航し、K顧問が乗り組み、同ヨット3隻を曳航した同校ヨット部後援会所有のモーターボート南風、及び同部元顧問の教諭が乗り組み、同ヨット1隻を曳航した同人所有のモーターボートコボとともに、同日08時30分広島港第1区坂町のビーアンドジー坂海洋センターを発し、09時40分ごろ広島観音マリーナ沖合に到着した。
 B受審人は、新人戦を監視していたところ、風が強くなって15時45分女子のレースが中止となったことから、南風、コボ及び男子艇4隻を残して先に帰航することとし、若葉丸にC指定海難関係人のほか女子部員3名を乗せ、同船の船尾に女子艇3隻を縦列に曳航し、各艇に女子部員を2名ずつ乗艇させ、若葉丸の船尾から最後部のヨットの後端までの距離を約30メートルの引船列とし、16時10分同マリーナ南東方沖合を発して帰途に就いた。
 B受審人は、船体中央部付近の前部甲板より1段高くなった部分の右舷側に前方を向いて腰掛け、女子部員3名のうち、2名を前部甲板の左舷側に座らせ、1名を後部甲板より1段高くなった船尾端部分の右舷側に腰掛けさせ、その左舷側に前方を向いて腰掛けたC指定海難関係人に操船を委ねて運航指揮に当たった。
 C指定海難関係人は、右手で船外機のレバーを握って操舵操船に当たり、16時48分宇品灯台から100度240メートルの地点に達したとき、針路を043度に定め、4.0ノットの曳航速力で進行中、同時57分右舷船首35度320メートルのところに、カキ筏に係留しているいわさき丸を初めて視認し、ほぼ同じころ、B受審人も同じ状態の同船を初めて視認した。
 C指定海難関係人は、16時58分少し過ぎ黄色標識灯の北西側に当たる、鉄塔から300度500メートルの地点に達したとき、針路を070度に転じて進行し、同時58分半わずか前、右舷船首36度200メートルのところに、これまで数回見たときと同様にカキ筏に係留したままのいわさき丸を視認して続航した。
 ほぼ同じころ、B受審人は、右舷船首36度200メートルのところに、カキ筏に係留したままのいわさき丸を再び視認した。
 B受審人及びC指定海難関係人は、その後いわさき丸から目を離していたので、16時58分半同船が筏から離れて後退を始め、同時59分少し過ぎ右舷正横後2度140メートルの地点で、いわさき丸が船首を北方に向けて前進を開始したものの、まだ速力が遅く、同時59分半右舷正横後13度135メートルとなってその方位が右方に大きく変化しており、同船が増速しなければその前路を自船及び最後部のヨットが90ないし60メートルの距離で無難に航過できる状況であったが、これに気付かないまま進行した。
 17時00分わずか前B受審人及びC指定海難関係人は、後方の被引ヨットに乗っていた女子部員の「危ない」という声で右舷後方を振り向き、間近に迫ったいわさき丸に気付いたものの、どうすることもできず、原針路及び原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、いわさき丸は、船首部船底に擦過傷を生じたのみであったが、若葉丸は、右舷前部外板上部に破口及び左舷前部外板上部に亀裂などを生じ、前部甲板の左舷側に座っていたヨット部員H(昭和60年2月4日生)が甲板といわさき丸の船首船底との間に挟まれ、病院に搬送されたものの大量出血により死亡し、船尾端部分の右舷側に腰掛けていた同部員Yが6週間の通院加療を要する右腓骨内果骨折などを負った。

(航法の適用)
 本件衝突は、港則法適用港である広島港内において発生したものであり、以下適用される航法について検討する。
1 港則法第18条の適用について
 いわさき丸は、船舶検査証書の用途欄に「遊漁船兼交通船」と記載され、かつ、漁船登録もされていて、その活動範囲は港内に限られないこと、また、若葉丸は、船舶検査証書の用途欄には「監視船」と記載され、安芸南高校ヨット部の活動支援に使用されており、ヨットの練習及び競技海域が必ずしも港内に限られないこと、及び当時は船尾に3隻のヨットを曳航した引船列であったことから、いわさき丸及び若葉丸引船列のいずれも同法第3条に定める雑種船とは認められず、第18条の適用はない。
2 港則法第14条の適用について
 衝突地点は、078度方向への直線航路である第1航路内であるが、いわさき丸は同航路を横切る015度の針路で進行していたものであり、また、若葉丸引船列は衝突の40秒ばかり前に同航路の南側から070度の針路で航路内に入ってそのまま斜航していたものであり、いずれも航路を航行していたものとは認められず、同条の適用はない。
3 海上衝突予防法第15条の適用について
 両船は互いに針路が55度の角度で交差する状況で接近していることから、横切り船の航法である第15条の適用が考えられるが、いわさき丸は発進後45秒間に、速力を0ノットから15ノットばかりまで増速して衝突に至ったもので、両船間において、相手船の方位は短時間のうちに大きく変化しており、同条の適用はない。
4 以上により、港則法及び海上衝突予防法には、本件に適用する航法の規定がないので、海上衝突予防法の船員の常務により律するのが相当である。

(原因に対する考察)
 本件は、一定速力で航行中の若葉丸引船列に対して、いわさき丸が発進後増速を続けたことによって、衝突の少し前、両船が90メートルに接近したのちに衝突の危険が発生したものである。この時点では、若葉丸引船列は、衝突を避けるための措置をとる時間的、距離的余裕はなかったから、増速を続けて衝突の危険を発生させたいわさき丸側に原因があり、若葉丸側に原因はない。
 A受審人は、窓ガラスに付着して乾燥した波しぶきを拭き取らないで、操縦席からの見通しが悪いまま発進し、若葉丸引船列を見落して衝突の危険を発生させたものであり、同受審人の見張り模様は本件発生の原因となる。
 B受審人及びC指定海難関係人の両名は、いわさき丸が発進してから衝突の直前まで同船を視認していないが、同船を視認していたとしても、衝突の危険が発生した時点では、衝突を避けるための措置をとることができなかったから、両名の見張り模様は本件発生の原因とならない。

(原因)
 本件衝突は、広島港第1区の金輪島北方沖合において、いわさき丸が、見張り不十分で、無難に航過する態勢の若葉丸引船列の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、金輪島北部沿岸のカキ養殖場内の筏を離れ、丹那船溜まりに向かって広島港内を北上しようとする場合、操舵室の窓ガラスに付着した塩分を拭きとるなどして周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同室前面右舷側の旋回窓を通して狭い範囲ながらも船首方が良く見えたことから、同室の窓ガラスに付着した塩分を拭き取らずに筏から発航し、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、左舷前方から無難に航過する態勢で前路に接近する若葉丸引船列を見落としたまま増速し、同引船列の前路に進出して若葉丸との衝突を招き、いわさき丸の船首部船底に擦過傷を、若葉丸の右舷前部外板に破口及び左舷前部外板に亀裂などをそれぞれ生じさせたほか、若葉丸の同乗者1名を死亡させ、同1名に右足骨折などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
 C指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文平成13年9月26日広審言渡
 本件衝突は、停留中のいわさき丸が、見張り不十分で、無難に替わる態勢にあった若葉丸引船列に対し、発進して新たな衝突のおそれのある関係を生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、若葉丸引船列が、動静監視不十分で、避航を促すための有効な音響による信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。


参考図
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