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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 施設等損傷事件一覧 >  事件





平成14年横審第33号
件名

プレジャーボートゆきかぜのり養殖施設損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成14年7月24日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(森田秀彦)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:ゆきかぜ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
のり養殖施設・・・のり網及びアバ網等の損傷
ゆきかぜ・・・プロペラにロープが絡まって航行不能

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件のり養殖施設損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月29日08時40分
 木更津人工島南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートゆきかぜ
全長 8.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット

3 事実の経過
 ゆきかぜは、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、船首0.4メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成12年12月29日08時00分千葉県浦安市の浦安マリーナを発し、同県木更津港に向かった。
 ところで、千葉県木更津市盤州沖(以下「盤州沖」という。)には、毎年8月20日から翌年5月20日までの間、周囲に黄色簡易標識灯を設けたのり養殖施設が設置され、同施設の区画は、日本水路協会刊行のヨット・モーターボート用参考図第H−172号(以下「参考図」という。)に記載されており、A受審人は、参考図を船内に備えていた。
 08時11分A受審人は、東京湾アクアライン海ほたる灯(以下「海ほたる灯」という。)から004度(真方位、以下同じ。)6.7海里の地点において、針路を179度に定め、機関を全速力前進にかけ、20.0ノットの速力で手動操舵によって進行し、同時32分同灯から127度1,400メートルの地点に達したとき、機関を半速力前進とし、10.0ノットの速力に減じて東京湾アクアライン東側の橋梁下を航過し、同時34分海ほたる灯から145度1,400メートルの地点で、新日本製鐵株式会社君津製作所の一番東側の煙突を向首目標にして針路を187度に転じ、盤州沖に向け同じ速力のまま続航した。
 A受審人は、マリーナの係員の注意で、盤州沖ののり養殖施設の存在を知っていたが、同施設の標識灯に注意して航行すれば問題ないものと思い、参考図に当たって、その設置区画など盤州沖の水路調査を十分に行うことなく進行した。
 08時39分A受審人は、のり養殖施設が前路300メートルとなったが、同施設に向首していることに気付かないまま続航中、08時40分ゆきかぜは、海ほたる灯から170度3,100メートルの地点において、原針路、原速力のまま同施設に乗り入れた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 その結果、のり養殖施設は、のり網及びアバ綱等に損傷を生じ、ゆきかぜは、プロペラにロープが絡まって航行不能となり、来援した漁船に救助された。

(原因)
 本件のり養殖施設損傷は、木更津人工島南東方沖合において、盤州沖に向け航行する際、同沖の水路調査が不十分で、同沖に設置されたのり養殖施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、木更津人工島南東方沖合において、盤州沖に向け航行する場合、同沖に設置されたのり養殖施設の存在を知っていたのであるから、同施設に乗り入れることのないよう、船内に備えていた参考図に当たって、その設置区画など盤州沖の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、のり養殖施設の標識灯に注意して航行すれば問題ないものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、盤州沖に設置された同施設に向首進行して同施設に乗り入れる事態を招き、同施設ののり網及びアバ綱等を損傷させるに至った。





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