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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成14年神審第42号
件名

プレジャーボートともちゃん号同乗者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年8月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:ともちゃん号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
同乗者1人が溺水により肺炎を発症

原因
気象・海象に対する配慮不十分

裁決主文

 本件同乗者負傷は、水上オートバイの同乗者に救命胴衣を着用させなかったばかりか、いそ波に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月5日13時40分
 徳島県富岡港南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートともちゃん号
全長 2.76メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 73キロワット

3 事実の経過
 ともちゃん号は、幅0.98メートル深さ0.39メートルの、ウォータージェット推進装置を有する2人乗りのFRP製水上オートバイで、船体中央部に操縦ハンドルを備え、その後方から船尾にかけて騎乗式座席が装備されていた。
 A受審人は、知人12人とともに、平成13年8月5日10時00分ごろ徳島県富岡港南西方の海岸(以下「中林海岸」という。)に着き、同海岸の南部付近でバーベキューやビーチバレーを行ったり、同海岸沖合でともちゃん号ほか2隻の水上オートバイに交替で乗船して遊走を行ったりした。
 ところで、中林海岸南部の沖合は、北東方約200メートル付近まで水深2メートル以下の浅瀬が拡延しており、南東方からうねりの打ち寄せるときにはいそ波が高起しやすい海域となっていた。
 13時35分A受審人は、ともちゃん号の前部座席に知人Mを同乗させたが、同人に救命胴衣を着用させず、後部座席から同人を抱えるようにして操縦ハンドルを操作する姿勢で、富岡港淡島東防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から198度(真方位、以下同じ。)1,080メートルの海岸を発し、中林海岸に沿って南北に遊走を続けた。
 13時40分わずか前A受審人は、防波堤灯台から197度1,050メートルの地点に達したとき、沖合へ向け遊走することにしたが、操縦ハンドルを操作することのみに気を取られ、減速するなり、いそ波の高起しやすい海域を避けるなど、いそ波に対する配慮を十分に行うことなく、針路を浅瀬に接近する080度に定め、40キロメートル毎時の対地速力で進行した。
 ともちゃん号は、同じ針路速力で続航中、13時40分防波堤灯台から193度1,020メートルの地点において、折からの高起したいそ波を右方から受けて左方に大傾斜し、その弾みでA受審人及びM同乗者が落水した。 
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期にあたり、南東方から打ち寄せる波高約1.3メートルのうねりがあった。
 A受審人は、海面に浮上して、手足をばたつかせていたM同乗者のところへ泳いでいき、同人を抱きかかえて浮いていたところ、通りかかった漁船に救助された。
 その結果、M同乗者が溺水により約10日間の入院加療を要する肺炎を発症した。

(原因)
 本件同乗者負傷は、徳島県富岡港南方沖合において、水上オートバイに2人乗りで沖へ向け遊走するにあたり、同乗者に救命胴衣を着用させなかったばかりか、いそ波に対する配慮不十分で、高起したいそ波を右方から受けて左方に大傾斜し、同乗者が落水したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、徳島県富岡港南方沖合において、水上オートバイに2人乗りで沖へ向け遊走する場合、南東方からのうねりがあったのであるから、減速するなり、いそ波の高起しやすい海域を避けるなど、いそ波に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操縦ハンドルを操作することのみに気を取られ、いそ波に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、高速力のままいそ波の高起しやすい海域に接近し、高起したいそ波を右方から受けて左方に大傾斜し、同乗者を落水させる事態を招き、同人に溺水による肺炎を発症させるに至った。





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