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平成14年那審第19号
件名

プレジャーボート嶺丸転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成14年9月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

理事官
平良玄栄

指定海難関係人
A 職名:嶺丸操縦者

損害
船体は損傷ない、船外機を濡損

原因
錨索の張り出し状況の確認不十分

裁決主文

 本件転覆は、釣り場を発進する際、錨索の張り出し状況の確認が十分でなかったことによって発生したものである。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月27日14時30分
 沖縄県屋那覇島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート嶺丸
全長 3.18メートル
1.30メートル
深さ 0.55メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 嶺丸は、船外機を備えた無甲板型FRP製プレジャーボートで、船首端から後方約0.7メートルのところに長さ0.50メートル幅0.43メートル高さ0.23メートルの生簀(いけす)及びその前方に物入れを設け、両舷側外板の舷縁下約0.3メートルのところには、船体の横揺れ防止用として直径0.15メートル長さ3.26メートルの塩化ビニール製パイプを舷側に沿って船首船尾部でステンレス製金具によって取り付けていた。
 A指定海難関係人は、平成11年11月に中古の本船を購入し、海技免状を受有しないまま、月に2度ほど沖縄県屋那覇島付近で専ら釣りなどのレジャー用に使用していたところ、同人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.05メートル船尾0.35メートルの喫水をもって、同13年12月27日10時00分屋那覇島北方約1,400メートルのところの伊是名島伊是名漁港を発し、屋那覇島南岸付近の釣り場に向かった。
 10時20分A指定海難関係人は、釣り場に至って一本釣りを行ったものの、ほとんど釣果がなかったので、12時00分屋那覇島東端の御埼から060度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点に移動して機関を停止し、重さ約3キログラムの4爪錨に、直径10ミリメートルの化学繊維製の錨索を結び付け、その他端を左舷船首部外板に開けた穴を通して船内に固定し、同錨を左舷船首部から水深35メートルのところに投下し、錨索を約45メートル延出して錨泊した。そして、アンカー浮かせブイと呼ばれる、直径30センチメートルのプラスチック製浮子(以下、単に「ブイ」という。)を取り付けた長さ約2メートルの化学繊維製ロープの一端を、ブイが錨索を自由に移動することができるように同索にシャックルで連結し、船首が北方を向いた状態で釣りを再び始めた。
 ところで、揚錨方法は、錨索を伸縮せずにそのままの状態で機関を前進にかけ、錨索を左舷船尾方に張って4爪錨を海底から引き起こし、船の航走につれて左舷側にあるブイが海面に浮いた状態から海中に沈み込み、その浮力で同錨を上げ、ブイが海面に浮き上がったところで錨索を手繰り寄せて4爪錨を船内に収納するというものであった。
 14時29分半A指定海難関係人は、釣りをやめ、帰港することとし、同時30分少し前揚錨するため、船首が360度を向いているとき、船首方を向いて右舷船尾部に腰掛け、左手で船外機を操作して機関を半速力前進にかけて移動したが、いつものようにブイは左舷側にあって船の航走につれブイが海中に沈み、錨索は徐々に左舷船尾方に張っていくものと思い、錨索の張り出し状況を十分に確認しなかったので、ブイが船首部船底を伝わって右舷船首部に出ていて、錨索が船底下の船首尾線上に張ってきたことに気付かなかった。
 嶺丸は、船首を360度に向けて前進中、14時30分わずか前錨索が船外機に絡み付いて機関が停止し、急激に反対方向の風下に回頭して船首が持ち上げられ船尾側に傾斜し、船尾から多量の海水が船内に浸入し、14時30分御埼から060度1,200メートルの地点において、船首が180度を向いたまま復原力を喪失して船尾側に転覆した。
 当時、天候は晴で風力4の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には高さ約1メートルの波があった。
 転覆の結果、船体に損傷を生じなかったが、船外機に濡損を生じ、のち僚船により伊是名漁港に曳航された。また、A指定海難関係人は海中に投げ出されたが、しばらく船体につかまって漂流したのち、伊是名島に泳ぎ着いた。

(原因)
 本件転覆は、沖縄県屋那覇島東方沖合において、釣りをやめ、帰港することとし、揚錨するため機関を前進にかけて移動する際、錨索の張り出し状況の確認が不十分で、錨索が船外機に絡み付いて機関が停止し、急激に反対方向の風下に回頭して船尾側に傾斜し、船尾から多量の海水が船内に浸入して復原力を喪失したことによって発生したものである。

(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、沖縄県屋那覇島東方沖合において、釣りをやめ、帰港することとし、揚錨するため機関を前進にかけて移動する際、錨索が船外機に絡まないよう、錨索の張り出し状況を十分に確認しなかったことは、本件発生の原因となる。





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