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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第48号
件名

プレジャーボートムーミン乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年9月18日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:ムーミン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂、乗組員及び同乗者1人が負傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年9月14日20時00分
 和歌山県田辺港北西方沖合

2 船舶の要目
船種船名  プレジャーボートムーミン
全長 7.21メートル
登録長 6.49メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 139キロワット

3 事実の経過
 ムーミンは、レーダー不装備のFRP製プレジャーボートで、A受審人ほか1人が乗り組み、同乗者2人を乗せ、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、回航の目的で、平成13年9月14日06時00分愛媛県松山港を発し、京浜港横浜区に向かった。
 発航に先立ちA受審人は、それまで入港経験のない和歌山県田辺港に寄港して仮泊する航海計画を立て、鳴門海峡を通過したのち、同県の西岸沿いを南下し、田辺港北西方沖合を東航することとしたが、GPSプロッターを見て航行すれば大丈夫と思い、浅所に乗り揚げないよう、ヨット・モータボート用参考図H−134号を購入して精査するなど、水路調査を十分に行わなかったので、同海域の浅所の存在について認識していなかった。
 こうして、A受審人は、同乗者らを操舵室左舷側の座席に座らせ、自らは同室右舷側の操縦席に座って操舵と見張りに当たり、GPSプロッターの表示を見ながら和歌山県西岸沿いを南下し、19時54分少し過ぎ紀伊堺港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から271度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点において、針路を田辺港付近に向かう105度に定め、機関を回転数毎分2,500にかけ、25.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A受審人は、陸岸に近づいたので目視を頼りに続航し、左舷前方に多数の人家の明かりを認め、これを田辺港と判断し、19時59分少し過ぎ西防波堤灯台から244度1.1海里の地点に達したとき、同灯台に向け針路を064度に転じたところ、森埼西方の浅所に向首することとなったが、水路調査を十分に行わなかったので、このことに気付かないまま増速した直後、20時00分西防波堤灯台から244度1,270メートルの地点において、原針路のまま、速力が30.0ノットになったとき、同浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底外板に亀裂を生じたが、のち修理され、乗組員及び同乗者1人が負傷した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、和歌山県田辺港に向け同港北西方沖合を東航するにあたり、水路調査が不十分で、森埼西方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、和歌山県田辺港に向け同港北西方沖合を東航する場合、GPSプロッターに表示される地図には岩礁などが記載されていないことがあるから、浅所に乗り揚げないよう、ヨット・モータボート用参考図H−134号を購入して精査するなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、GPSプロッターを見て航行すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、森埼西方の浅所に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船底外板に亀裂を生じさせ、乗組員及び同乗者1人を負傷させるに至った。





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