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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年長審第19号
件名

貨物船よしの乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年7月31日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(道前洋志、半間俊士、寺戸和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:よしの船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
球状船首を圧壊等

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月24日22時30分
 長崎県臼浦港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船よしの
総トン数 199トン
全長 56.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 よしのは、鋼材や肥料などの輸送に従事する鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、空倉のまま、船首1.5メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、鋼材積込みの目的で、平成13年12月24日14時40分熊本県八代港を発し、山口県小野田港に向かった。
 A受審人は、船橋当直を自身と一等航海士との単独6時間交替制とし、17時30分長崎県野母埼東方8海里の地点で一等航海士と交替して当直に就き、同埼南方を通過したのち同県西岸沖を北上し、21時20分御床島灯台から251度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点に達したとき、針路を013度に定め、機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 A受審人は、暖房した船橋内で立って当直に当たり、22時05分牛ケ首灯台から216度2,900メートルの地点で005度に転針したのち眠気を催すようになったが、船橋の空気を入れ替えたところ少し眠気がとれたので居眠りすることはないものと思い、完全に眠気がとれるまで船橋ウイングに出て冷気に当たるとともに暖房を消すなど居眠り運航の防止措置を十分にとることなく当直を続けているうち、操縦スタンドに寄りかかっていつしか居眠りに陥った。
 22時14分A受審人は、平戸瀬戸へ向かう転針予定地点である牛ケ首灯台から293度1,600メートルの地点に達したことに気付かないまま続航し、22時30分臼浦港楠泊東防波堤灯台から288度980メートルの長崎県臼浦港内の浅所に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、潮候は低潮時であった。
 乗揚の結果、球状船首を圧壊し、正船首部に凹損を生じたが、巡視船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、長崎県西岸沖を平戸瀬戸に向けて北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県臼浦港内の浅所に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、長崎県西岸沖を平戸瀬戸に向けて自動操舵により北上中、暖房した船橋で単独当直に当たっているとき眠気を催した場合、完全に眠気がとれるまで船橋ウイングに出て冷気に当たるとともに暖房を消すなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、船橋の空気を入れ替えたところ少し眠気がとれたので居眠りすることはないものと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、陸岸に向首したまま進行して乗揚を招き、球状船首を圧壊し、正船首部に凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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