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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年長審第27号
件名

遊漁船幸洋丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年7月19日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:幸洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
左舷船底外板に擦過傷等
釣り客3人が頸部に筋緊張

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月24日04時10分
 天草下島西岸

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船幸洋丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 280キロワット

3 事実の経過
 幸洋丸は、後部に操舵室を有するFRP製遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客3人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.6メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成13年8月23日17時00分熊本県軍ヶ浦漁港を発し、18時30分鹿児島県上甑島北東方8海里ばかりの釣り場に至り、投錨して釣りを行い、翌24日02時15分同地点を発して帰途に就いた。
 A受審人は、釣り場を03時半ごろ発進する予定であったが、客の1人が船酔いがひどくなったことから、早目に発進してゆっくり航走することとし、揚錨ののち機関を微速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、遊漁中は釣り客に危険な行為をしないよう注意をしたうえで、彼等の行動に配慮しながらも操舵室で腰を掛けて休息していたが、今回は釣り客の手伝いが忙しく発進するまで釣りの手伝いをしていて休息がとれなかったことから、いくぶん疲労がたまった状態で当直に就き、操舵室左舷寄りにある背もたれのついた操縦席に腰を掛けて北上した。
 03時54分A受審人は、大江港灯台から209度(真方位、以下同じ。)3.5海里の地点に達したとき、針路を030度に定めて進行し、機関を減速し、船体の動揺もなく、周囲に他船も見当たらず、単調な航海であったことから、ときおり、目を閉じてうとうとするようになったが、操縦席から立って操舵するなど居眠り運航の防止措置をとらないで続航し、04時少し過ぎ間もなく軍ヶ浦漁港向け転針するころだと思っていたころ居眠りに陥り、陸岸に向けて続航し、04時10分大江港灯台から169.5度220メートルの浅所に幸洋丸は原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、左舷船底外板に擦過傷を生じたほか、推進器及び舵板を損傷し、釣り客3人が頸部に筋緊張を負った。

(原因)
 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分で、浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就いて平穏な海上を低速力で航行中、眠気を覚えた場合、背もたれのついた操縦席に腰を降ろしていると、居眠りに陥るおそれがあったから、立って操舵するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、浅所に向首進行して乗揚を招き、船底外板に擦過傷を生じさせ、釣り客に頸部筋緊張を負わせるに至った。





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