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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第3号
件名

旅客船サザンイーグル乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年7月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:サザンイーグル船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷推進器翼に曲損

原因
気象・海象に対する配慮不十分

主文

 本件乗揚は、視界不良時に行きあしを止めて視界の回復を待たなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年9月26日08時50分
 沖縄県八重山列島竹富島南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 旅客船サザンイーグル
総トン数 19トン
全長 26.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,529キロワット

3 事実の経過
 サザンイーグルは、沖縄県石垣港を基地として同県八重山列島諸港間の旅客輸送に従事する2基2軸の軽合金製旅客船で、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客14人を乗せ、船首0.75メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、平成13年9月26日08時30分小浜島の小浜港を発し、石垣港に向かった。
 ところで、小浜港の東南東方約5海里のところに竹富島が、さらに、その東北東方約2海里のところには石垣港があり、付近一帯はさんご礁海域となっており、同海域内の屈曲した狭い水路の要所要所には赤色や緑色の海面上高さ4.5メートルの立標が設けられていた。
 A受審人は、平素小浜港を発航して石垣港に向かう際、立標を船首目標として順次たどって狭い水路を東行して竹富島南西方のクントマリ埼南西方立標(以下、クントマリ埼各立標については「クントマリ埼」の冠称を省略する。)付近に至り、南西方立標と大原航路第4号立標間のクントマリ埼から199度(真方位、以下同じ。)1,700メートルばかりの地点に浅礁を示すために設置されていた、漁業用の直径約30センチメートルのオレンジ色プラスチック製浮玉(以下「オレンジ色浮玉」という。)を右舷船首方に見てこれを替わしたのち、目視により浅礁を確認しながら竹富島南側の大原航路(通称)の一部を経て竹富島南水路に入り、その後石垣港入口に向けるよう航行しており、これら航路の状況について十分に承知していた。
 一方、八重山観光フェリー株式会社は、運航管理規程に基づく運航基準により、発航前に港内の視程が500メートル以下となっているときは発航を中止すること、航行中に周囲の視程が500メートル以下となったときは、基準経路を基準速力により航行することと定めた基準航行を中止し、当直体制の強化を図るとともに安全な速力とし、状況に応じて停止、航路外錨泊又は基準経路変更の措置をとることなど、視界制限時の船長のとるべき措置を定めていた。
 こうして、A受審人は、小雨模様の中、視界がやや狭められていたものの、運航基準で定められた発航条件を満たしていたので前示のとおり発航し、間もなく機関を全速力前進にかけ、36.0ノットの速力で、甲板員を操舵室での見張りに就け、自らは同室右舷側で立って手動操舵に当たり、1.5海里レンジとしたレーダーと肉眼による見張りを行って狭い水路を東行し、08時47分少し前西方立標を057度80メートルに見る地点に達したころ雨足が強くなったので機関を25.0ノットの半速力に減じ、南西方立標を船首目標として進行した。
 08時49分少し過ぎA受審人は、南西方立標を032度50メートルに見る、クントマリ埼から217度1,670メートルの地点に達したとき、いつものとおり、浅礁上のオレンジ色浮玉を自船の右舷側約30メートルに見て航行するつもりで、針路を122度に定めたところ、そのころ東の風が強まり豪雨となって視程が約20メートルとなりオレンジ色浮玉を視認できず、いくら調整してもレーダー画面が真っ白となって立標や陸岸なども識別できなくなり船位を確認する手立てがなかったが、豪雨は一時的なもので、すぐに小降りとなってオレンジ色浮玉は見えてくるものと思い、速やかに行きあしを止めて視界の回復を待つことなく、浅礁に向首していることに気付かないまま続航中、08時50分南西方立標から128度570メートルの地点において、サザンイーグルは、原針路、原速力のまま、クントマリ埼南南西方の浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力5の東風が吹き、視程は約20メートルで、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、両舷推進器翼に曲損を生じ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、沖縄県竹富島南西方沖合のさんご礁の散在する海域を同県石垣港に向けて航行中、豪雨で視界が著しく制限され、船位を確認できなくなった際、速やかに行きあしを止めて視界の回復を待たなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県竹富島南西方沖合のさんご礁の散在する海域を同県石垣港に向けて航行中、豪雨で視界が著しく制限され、船位を確認できなくなった場合、クントマリ埼南南西方の浅礁に著しく接近することのないよう、速やかに行きあしを止めて視界の回復を待つべき注意義務があった。しかるに、同人は、豪雨は一時的なもので、すぐに小降りとなって浅礁上のオレンジ色浮玉は見えてくるものと思い、速やかに行きあしを止めて視界の回復を待たなかった職務上の過失により、クントマリ埼南南西方の浅礁に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、両舷推進器翼に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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