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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年仙審第11号
件名

貨物船香椎丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年7月24日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治、亀井龍雄、大山繁樹)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:香椎丸船長 海技免状:三級海技士(航海)

損害
船底全体に凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年9月19日23時20分
 香川県粟島北岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船香椎丸
総トン数 699トン
全長 81.215メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,618キロワット

3 事実の経過
 香椎丸は、専ら大分港から京阪神への鋼材輸送に従事する船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、スラブ2,042トンを積載し、船首4.2メートル船尾5.1メートルの喫水をもって、平成13年9月19日13時00分大分港を発し、大阪港に向かった。
 ところで、A受審人は、同年7月中旬に本船に乗船して以来、瀬戸内海中心の航路であるうえ、積揚地の動静が頻繁に変更されることから、就労時間が不規則となり勝ちであったところ、この度の大分港においても、当初9月19日午前7時の着岸予定が、前夜になって急に前日深夜に早まったため、夜間の休息を十分にとれないまま、着岸作業、荷役当直及び出港作業に連続して従事することとなったもので、出港したころには、幾分疲労が蓄積した状態であった。
 A受審人は、19日20時20分ごろ昇橋して来島海峡通航の指揮をとり、21時15分備後灘航路第1号灯浮標付近で、それまで在橋した機関長が降橋したあと、単独で当直に従事し、船橋左舷側に置かれていた椅子に腰掛けて見張りに当たり、21時50分高井神島灯台から315度(真方位、以下同じ。)0.6海里の地点で、針路を075度に定め、対地速力12.8ノットで自動操舵により進行した。
 22時12分A受審人は、備後灘航路第4号灯浮標を通過し、高井神島灯台から070度4.2海里の地点に達したとき、GPSプロッタにより船位が右に偏しているのを認め、自動操舵の設定針路を073度に修正して備後灘航路の灯浮標群に沿う針路とし、椅子に戻って当直を続けた。
 A受審人は、椅子に座っているうち、疲労の蓄積から来る眠気を感じるようになったが、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、椅子から立ち上がって外気に当たるとか、コーヒーを飲んで眠気を払うなどの居眠り運航の防止措置をとらなかったところ、22時30分ごろまもなく備後灘航路第5号灯浮標に達しようとしたところで、居眠りに陥った。
 香椎丸は、A受審人が居眠りに陥ったまま、原針路、原速力で続航し、23時20分二面島灯台から173度1,750メートルの地点において、粟島北岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、香椎丸は船底全体に凹損などを生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、瀬戸内海備後灘を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、当直者が居眠りに陥り、香川県粟島北岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に従事し、瀬戸内海備後灘を自動操舵により航行中、椅子に腰掛けている間に眠気を感じた場合、居眠り運航とならないよう、椅子から立ち上がって外気に当たるとか、コーヒーを飲んで眠気を払うなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、椅子から立ち上がって外気に当たるとか、コーヒーを飲んで眠気を払うなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰掛けたまま居眠りに陥り、粟島北岸に向首したまま進行して乗揚を招き、船底全体に凹損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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