(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年7月28日00時15分
北海道歯舞漁港西方
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第八真盛丸 |
総トン数 |
7.3トン |
登録長 |
12.67メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
120 |
3 事実の経過
第八真盛丸(以下「真盛丸」という。)は、さんま流し網漁業等に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、さんま流し網漁の目的で、船首0.8メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成13年7月26日10時00分北海道歯舞漁港を発し、納沙布岬南方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、15時30分ごろ納沙布岬南方50海里付近の漁場に至って操業を繰り返し、さんま約1トンを漁獲したところで操業を終え、翌27日19時15分納沙布岬灯台から173度(真方位、以下同じ。)52.5海里の地点を発進し、歯舞漁港に向け帰航の途に就いた。
ところで、A受審人は、同月7日漁期に入り、荒天の日を除き休漁日なしで納沙布岬南方沖合の漁場で1ないし2昼夜操業を行って歯舞漁港に帰航し、水揚げを終えたのち暫時休息をとり再び出漁する形態で操業を繰り返しており、同月26日同漁港を出港したあと自ら船橋当直に就いて漁場に至り、漁場では投網後の1ないし2時間の待機時間に断続的に休憩をとるだけであったことから疲労が蓄積し睡眠不足の状態となっていた。
A受審人は、発進時から単独で船橋当直に就き、他の乗組員を休息させ、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で北上し、翌27日23時00分歯舞港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から167度12.6海里の地点で、針路をハボマイモシリ島に向ける350度に定めて自動操舵とし、レーダーを作動して操舵室左舷側でいすに腰を掛け見張りに当たり進行した。
23時49分少し過ぎA受審人は、南防波堤灯台から161度4.5海里の地点に達しとき、前方4海里ばかりにハボマイモシリ島灯台の灯火を視認し、自動操舵のまま針路を同島西方に向ける335度に転じ、南防波堤灯台の緑灯が000度方向に認めるようになったところで歯舞漁港港口に向け転針するつもりで続航した。
A受審人は、歯舞漁港に接近したとき、操業に引き続き長時間当直に当たり、そのまま単独で当直を続けると疲労の蓄積と睡眠不足から居眠りするおそれがあったが、入港まであと少しだから大丈夫と思い、早めに休息中の甲板員を起こして見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、引き続き同じ姿勢で見張りに当たっているうち、いつしか居眠りに陥った。
こうして、真盛丸は、A受審人が居眠りを続け、歯舞漁港港口に向けて針路が転じられないまま、同漁港西方海岸に向首進行し、翌28日00時15分南防波堤灯台から229度0.5海里の地点において、原針路、原速力で、同海岸近くの浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、真盛丸は、船尾骨材に曲損及びプロペラ先端に欠損を生じたが、その後引き下ろされて修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、北海道納沙布岬南方沖合の漁場から歯舞漁港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同漁港西方海岸近くの浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き納沙布岬南方沖合の漁場から歯舞漁港に向け帰航中、同漁港に接近した場合、操業に引き続き長時間当直に当たり疲労の蓄積と睡眠不足から居眠りするおそれがあったから、居眠り運航とならないよう、早めに休息中の甲板員を起こして見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、入港まであと少しだから大丈夫と思い、早めに休息中の甲板員を起こして見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、居眠り運航となって同漁港西方海岸近くの浅礁に向首したまま進行して乗揚を招き、真盛丸の船尾骨材に曲損及びプロペラ先端に欠損を生じさせるに至った。