(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年2月15日05時47分
長崎県的山大島北方
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船新丸 |
総トン数 |
4.2トン |
登録長 |
10.65メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
70 |
船種船名 |
貨物船フォーチュンリバー |
総トン数 |
4,635トン |
全長 |
93.95メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
2,647キロワット |
3 事実の経過
新丸は、はえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.50メートル船尾1.78メートルの喫水をもって、平成14年2月15日04時30分法定の灯火を表示して長崎県船唐津漁港を発し、同県二神島北方漁場に向かった。
04時41分A受審人は、魚固島灯台から090度(真方位、以下同じ。)550メートルの地点において、針路を二神島灯台に向首する323度に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
05時32分A受審人は、二神島灯台から143度5.0海里の地点に達したとき、左舷船首45度3.8海里ばかりのところに、前路を右方に横切る態勢のフォーチュン リバー(以下「フ号」という。)の白、白、緑灯を初認し、同船と接近するまでには時間があるので、3海里レンジに設定したレーダー映像を時々見ながら、船橋内の石油ストーブで朝食の即席うどん用の湯を沸かし始めた。
05時43分A受審人は、二神島灯台から143度3.3海里の地点に達したとき、レーダーで左舷船首45度1.0海里のところにフ号の映像を認め、衝突のおそれがある態勢であることを知ったが、もし同船が自船を避航しなくても、もう少し接近してから自船が避航するつもりでいたところ、湯が沸いたのでうどんを作り始め、これに熱中してその動静監視を十分に行わなかったので、同船が避航しないまま接近していることに気付かず、右転するなど衝突を避けるための協力動作をとらないまま続航した。
05時47分少し前A受審人は、うどんが出来上がったのでフ号の接近状況を確認するため左方を見たとき、至近に迫った同船を認め、直ちに全速力後進としたが及ばず、05時47分二神島灯台から143度2.6海里の地点において、フ号の船首が、原針路、原速力のままの新丸の左舷側中央部に前方から86度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、視界は良好であった。
また、フ号は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長Yほかフィリピン人15人が乗り組み、空倉のまま、船首3.26メートル船尾4.44メートルの喫水をもって、同月10日09時10分中華人民共和国黄埔を発し、関門港六連泊地に向かった。
越えて15日04時00分一等航海士Hは、長崎県生月島西方において甲板手と共に船橋当直に就き、同時46分大碆鼻灯台から316度1.5海里の地点で、針路を050度に定め、機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で、法定の灯火を表示して自動操舵により進行中、右舷前方9海里ばかりのところに前路を左方に横切る態勢の2隻のレーダー映像を認めるようになったので、05時24分二神島灯台から203度4.8海里の地点において057度に転針した。
05時43分H一等航海士は、二神島灯台から161度2.7海里の地点に達したとき、右舷船首41度1.0海里のところに、前路を左方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近する新丸の灯火を視認できる状況であったが、左舷側にかわした2隻に気を取られて右舷側の見張りを十分に行っていなかったので、これに気付かず、右転するなど新丸の進路を避けないまま続航した。
05時45分半少し過ぎH一等航海士は、海図室に入って海図に船位を記入し、同時46分半少し過ぎ同室から出てきたとき、右舷船首至近に新丸の白、紅灯を認め、手動操舵に切り替えて右舵をとったが及ばず、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
H一等航海士は、衝撃を感じなかったところからそのまま続航し、のち海上保安部から連絡を受けて唐津港に入港した。
衝突の結果、新丸は左舷側中央部外板に破口などを生じて浸水したが、のち修理され、フ号には損傷はなく、A受審人が肋骨不全骨折を負った。
(原因)
本件衝突は、夜間、長崎県的山大島北方において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、フ号が、見張り不十分で、前路を左方に横切る新丸の進路を避けなかったことによって発生したが、新丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、長崎県的山大島沖を漁場に向けて航行中、左舷船首方向に前路に向けて進行するフ号を視認し、衝突のおそれがあることを知った場合、同船が自船の進路を避けるかどうか判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、接近するまでにはまだ時間があるものと思って朝食の準備を始めて熱中し、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船が避航しないまま接近していることに気付かず、右転するなど衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して衝突を招き、自船の左舷側中央部外板に破口などを生じさせ、自身も肋骨不全骨折を負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。