(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年9月2日13時53分
大阪湾東部
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートジェミニ |
総トン数 |
19トン |
登録長 |
13.85メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
728キロワット |
3 事実の経過
ジェミニは、FRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、友人Oを同乗させ、釣りの目的で、船首0.6メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成13年9月2日07時00分大阪港堺泉北区の定係地の泉大津マリーナ(以下「マリーナ」という。)を発し、友ケ島水道の沖ノ島北岸付近に至って、釣りを行ったのち、12時50分釣り場を発進し帰途に就いた。
A受審人は、キャビンにおいて単独で船橋当直にあたり、13時37分わずか過ぎ大阪航空局岸和田沖NDB海上架台灯(以下「架台灯」という。)から224度(真方位、以下同じ。)5.3海里の地点に達したとき、針路を041度に定め、機関を全速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
ところで、架台灯の周囲には、四隅に直径2.2メートルのコンクリート製円筒柱を配し、その円筒柱間にワイヤーロープが水面下2ないし3メートルから水面上4ないし5メートルの幅約7メートル間にターンバックルを介して張り巡らされ、東西長さ52メートル南北長さ35メートルとなる長方形の防衝施設(以下「防衝柵」という。)が設置されていた。
A受審人は、阪南港と関西国際空港工事現場との往来船が多い海域を過ぎたのち、13時47分阪南港北防波堤灯台から265度2,100メートルの地点に達したとき、海上平穏で視界もよく、前路に気になる他船がいなくなったことなどから気が緩み、眠気を催すようになったが、マリーナまでもうすぐなので、よもや居眠りすることはないと思い、行きあしを止めて外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、北上を続けた。
A受審人は、操縦席に腰を掛け、舵輪の横に左手を置き、右手で舵輪を握った姿勢で操船と見張りに当たっていたところ、阪南港北防波堤灯台を右舷正横に見た後間もなく居眠りに陥った。
ジェミニは、舵輪が右方にわずかばかり転舵された状態となり、やがて針路がゆっくりと右転を始めて防衝柵に向かって進行し、13時53分架台灯から135度30メートルの地点において、防衝柵南面の東端付近に、原速力のまま、075度に向首した状態で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
衝突の結果、ジェミニは、左舷船首部外板に大破を、防衝柵は、5本のターンバックルに曲損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理され、また、操縦席後方のソファーで仮眠していたO同乗者が、衝突の衝撃で飛んできた釣具箱が当たり1箇月の通院加療を要する鼻骨骨折を負った。
(原因)
本件防衝柵衝突は、大阪港堺泉北区へ向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、防衝柵に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、大阪港堺泉北区へ向け帰航中、眠気を催すようになった場合、居眠り運航とならないよう、行きあしを止めて外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、マリーナまでもうすぐなので、よもや居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに座ったまま居眠りに陥り、防衝柵に向首進行して衝突を招き、左舷船首部外板に大破を、防衝柵のターンバックルに曲損をそれぞれ生じさせ、また、同乗者に鼻骨骨折を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。