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平成14年仙審第29号
件名

貨物船第一徳神丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年9月18日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第一徳神丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
球状船首及び船首部左舷側を損傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月3日03時45分
 宮城県石巻港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一徳神丸
総トン数 499トン
全長 75.87メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット

3 事実の経過
 第一徳神丸(以下「徳神丸」という。)は、専ら穀類の輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、大豆かす1,200トンを積載し、船首3.05メートル船尾4.10メートルの喫水をもって、平成14年4月2日01時30分千葉港を発し、石巻港に向かった。
 A受審人は、船橋当直を自身、一等航海士及び甲板員の3人による4時間3交替制の単独当直とし、翌3日00時00分鵜ノ尾埼沖合で自ら当直にあたり、レーダーを作動し、機関を全速力前進にかけ、対地速力10.5ノットで自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、着岸予定が3日早朝となっていたので、石巻港到着後、航路に近い西防波堤の南側300メートル付近に錨泊して待機するつもりであった。
 03時28分A受審人は、石巻港雲雀野防波堤灯台(以下「雲雀野灯台」という。)から175度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点に達したとき、針路を000度とし、西防波堤東端に向首する態勢で予定錨地への接近を開始した。
 A受審人は、03時34分西防波堤東端まで2海里となったが、もう少し走ってから減速すればよいと思い、操舵室右舷側の椅子に前方を向いて腰を下ろし、ラジオから流れる音楽を俯いた姿勢で聴きながら当直を続けているうち、何時しか前方を見たりレーダー画面を見たりすることを失念し、船位の確認を行わないまま続航した。
 徳神丸は、西防波堤東端に向首する態勢で次第に同東端に接近していたが、A受審人がそのことに気付かず、ふと目を上げたとき同東端が目前に迫っているのを認め、急いで機関を停止したが、効なく、原針路、原速力のまま、03時45分雲雀野灯台から127度590メートルの地点において、その左舷船首部が西防波堤東端の壁面に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 衝突の結果、徳神丸は球状船首及び船首部左舷側を損傷した。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、石巻港において、西防波堤近くの予定錨地に進入する際、船位の確認が不十分で、同防波堤東端に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、石巻港において、西防波堤近くの予定錨地に進入するため、同防波堤東端に向首する針路で進行する場合、必要な時期に減速及び停止できるよう、前方を見たりレーダー画面を見たりして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、ラジオから流れる音楽に聴き入っていて、前方を見たりレーダー画面を見たりして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同防波堤東端への接近状況を把握しないまま進行して衝突を招き、球状船首及び左舷船首部を損傷するに至った。





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