(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年1月31日13時55分
宮城県石巻港港内
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第五俊洋丸 |
総トン数 |
1.7トン |
登録長 |
8.19メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
漁船法馬力数 |
30 |
3 事実の経過
第五俊洋丸(以下「俊洋丸」という。)は、FRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、低気圧で被害を受けたのり養殖施設の復旧作業のため、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、平成14年1月31日08時00分宮城県石巻港西部にある通称矢本漁港を発し、港外の同養殖施設に向かった。
A受審人は、08時20分のり養殖施設に至り、復旧作業に2人の乗組員とともに従事した後、13時48分石巻港雲雀野防波堤灯台から253度(真方位、以下同じ。)2,300メートルの地点を発進して、帰途についた。
発進時A受審人は、針路を069度に定め、機関を半速力前進にかけ、13.5ノットの対地速力で、船体後部の操舵及び機関操縦スタンドに前方を向いて立ち、手動操舵によって進行した。
A受審人は、矢本漁港とのり養殖施設の間を毎日2往復していて付近水域には慣れており、13時52分半石巻港雲雀野防波堤灯台から264度470メートルの地点に達したとき、いつものとおり針路を左に転じ、機関を全速力前進に上げて19.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、のり養殖施設の被害が深刻で通常の収穫量の半分程度に落ち込むと予想し、今後の復旧作業の方法やその費用の調達等についてあれこれ考え込みながら操船していたので、前方を向いていたものの、外界の認識能力が落ちて前路の見張りが不十分となり、転じた針路037度が石巻港第3号灯浮標に向首していることに気付かなかった。
A受審人は、13時54分半石巻港第3号灯浮標との距離が300メートルとなり、そのまま進行すると衝突するおそれがあったが、依然としてこの状況に気付かず、右転するなど同灯浮標を避けないまま進行し、13時55分石巻港雲雀野防波堤灯台から021度1,310メートルの地点において、俊洋丸の船首部が、石巻港第3号灯浮標に原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、視界は良好であった。
衝突の結果、船首部に破口を生じ、乗組員全員が打撲傷を負った。
(原因)
本件灯浮標衝突は、宮城県石巻港において、見張り不十分で、灯浮標に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、石巻港内を係留地に向かって航行する場合、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、被害を受けたのり養殖施設の復旧等について考え込み、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、灯浮標に向首したまま進行して同灯浮標との衝突を招き、船首部に破口を生じさせたほか、乗組員全員に打撲傷を負わせるに至った。