日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年函審第22号
件名

貨物船第三健星丸岸壁衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年9月26日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一、安藤周二、工藤民雄)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第三健星丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
健星丸・・・球状船首部に亀裂を伴う凹損
B岸壁・・・損傷あり、土砂流失

原因
操船(接岸速力)不適切

主文

 本件岸壁衝突は、接岸速力に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年1月9日14時54分
 北海道函館港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三健星丸
総トン数 498トン
全長 76.54メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,103キロワット

3 事実の経過
 第三健星丸(以下「健星丸」という。)は、船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、燐安1,021トンをほぼ満載状態で積載し、船首2.41メートル船尾4.43メートルの喫水をもって、平成14年1月7日12時30分千葉港千葉区第4区袖ケ浦ふ頭を発し、北海道函館港第4区北ふ頭に向かった。
 ところで、函館港の中央部には、北防波堤とその南方の西防波堤間の防波堤入口から東方に延びる幅320メートル長さ1,050メートルの第1航路があり、同航路出口から東北東方1,080メートルに北ふ頭が位置していた。
 A受審人は、同月9日14時10分函館港の前示防波堤入口からから南南西方4海里付近で昇橋し、前直の一等航海士から船橋当直を引き継ぎ、第1航路を通航して北ふ頭B岸壁(以下「B岸壁」という。)に対し直角に進行した後、B岸壁手前で右舷錨を投錨し機関を使用して接岸速力を減じ、左舷付けで着岸することにした。
 A受審人は、14時35分船首に一等航海士と甲板長を、船尾に機関長と一等機関士を配置につけて操舵室中央で手動操舵により操船に当たり、同時36分函館港西副防波堤灯台(以下「西副防波堤灯台」という。)から274度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点で、針路を第1航路右側に向ける090度に定め、機関を極微速力前進にかけ5.7ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 14時40分A受審人は、西副防波堤灯台を通過し、同時41分少し前機関を停止して惰力で続航中、同時42分代理店から電話によりB岸壁から先船が離岸していないので待つようにとの指示を受け、機関を後進にかけ速力を2ノットばかりに減じて待機することにした。
 A受審人は、14時48分先船が離岸したとの連絡を受け、機関を極微速力前進にかけ同一針路で進行し、同時50分西副防波堤灯台から087度860メートルの地点で、針路を北ふ頭に向く075度とし、機関を微速力前進にかけ約6ノットの速力で続航した。
 A受審人は、14時52分少し前第1航路に向かう先船を正船首に認めて右舵をとり機関の回転を上げて同船を避け、同時52分西副防波堤灯台から083.5度1,220メートルの地点に達し、先船と左舷を対して無難にかわる状況となったとき、船首がB岸壁まで450メートルに近付いていて、船尾方から強風を受け速力が7.5ノットとなったが、このままで大丈夫と思い、B岸壁から十分に離れたところで機関及び錨を使用して速力を減殺するなど、接岸速力に対して十分に配慮することなく、間もなく原針路に復し、B岸壁に対してほぼ直角に過大な速力のまま進行した。
 A受審人は、14時53分半わずか前船首からB岸壁まで130メートルに接近し、右舷錨投錨を令し、機関を微速力後進に続き半速力後進にかけたとき、速力が過大であることに気付き、全速力後進としたが及ばず、14時54分健星丸は、西副防波堤灯台から081度1,740メートルの地点において、原針路のまま、その船首がB岸壁壁面に83度の角度で約6ノットの速力をもって衝突した。
 当時、天候は曇で風力6の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、渡島地方には09時40分風雪波浪注意報が発表されていた。
 衝突の結果、健星丸は、球状船首部に亀裂を伴う凹損、B岸壁に損傷を生じ土砂が流失したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件岸壁衝突は、北海道函館港において、ほぼ満載状態で船尾方から強風を受けて着岸する際、接岸速力に対する配慮が不十分で、過大な速力のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、北海道函館港において、ほぼ満載状態で船尾方から強風を受けて着岸する場合、過大な速力のまま進行しないよう、岸壁から十分に離れたところで機関及び錨を使用して速力を減殺するなど、接岸速力に対して十分に配慮すべき注意義務があった。ところが、同人は、このままで大丈夫と思い、接岸速力に対して十分に配慮しなかった職務上の過失により、岸壁との衝突を招き、球状船首部に亀裂を伴う凹損及び岸壁に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION