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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年函審第24号
件名

引船第五坂本丸引船列交通船第二十坂本丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年9月25日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第五坂本丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
第五坂本丸・・・損傷ない
第二十坂本丸・・・右舷船首部外板に亀裂、浸水

原因
第五坂本丸・・・操船(回頭措置)不適切

裁決主文

 本件衝突は、第五坂本丸引船列が、港内を転係する際、回頭措置が不適切で、岸壁係留中の第二十坂本丸に著しく接近して旋回したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月14日10時30分
 北海道利尻島沓形港

2 船舶の要目
船種船名 引船第五坂本丸 台船坂本110号
総トン数 19トン  
登録長 14.54メートル  
全長   26.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 330キロワット

船種船名 交通船第二十坂本丸
登録長 6.30メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 29キロワット

3 事実の経過
 第五坂本丸は、港湾工事用台船などの曳航作業に従事する船首船橋型鋼製引船で、A受審人が1人で乗り組み、北海道沓形港の日出岸壁で待機した後、作業員2人が乗り組んで割石270トンを積載している、喫水船首1.8メートル船尾2.1メートルの台船坂本110号(以下「台船」という。)を転係することとなり、船首1.5メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、平成13年12月14日09時50分ごろ沓形岬灯台から071度(真方位、以下同じ。)620メートルの同岸壁の台船係留地点に移動した。
 ところで、日出岸壁は、沓形港東側港奥の、沓形岬灯台から068度530メートルの地点にあたる、東突堤東端基部から南東方向に55メートル、更にその南端から北東方向に140メートル延びるL字形に屈曲した長さ195メートルの岸壁で、前面が同岸壁に続き同方向に80メートル延びる船揚場、同船揚場北東端から直角に折れ北西方に120メートル延びる北防波堤、その先端から南西方に180メートル、西方に70メートル、北方に20メートル延びる東防波堤に囲まれた、同防波堤と東突堤間が入口をなす北東方向の長さ225メートル南東方向の幅110メートルの長方形状の海域となっていた。
 A受審人は、台船係留地点に到着したのち第五坂本丸の船尾フックから延出した長さ10メートルの化学繊維製ロープと、台船船首両舷から出した長さ10メートルのロープをY字型に連結し、第五坂本丸の船尾から台船後端までの長さを約40メートルの引船列として曳航準備を整えた後、対岸の東防波堤南側の台船係留予定地に、右旋回して西方から進入し左舷付けすることにした。
 10時28分A受審人は、台船が230度に向首して着岸した状態から曳航に取り掛かり、このとき右舷前方の東突堤東端基部付近の日出岸壁北西端に左舷出船付けで係留している第二十坂本丸を認めていたが、折から左舷方から風力5の南西風が吹いているから大回りして大丈夫と思い、舵及び機関を適宜使用して台船の船首を大きく右に振ったのち大角度で右旋回するなど、適切な回頭措置をとることなく、機関を回転数毎分800の微速力前進にかけ、右舵をとって手動操舵により進行した。
 その後、A受審人は、台船が第五坂本丸の船尾左方に振れながら、約100メートルの旋回径をもって1.6ノットの対地速力で右旋回中、10時30分少し前、沓形岬灯台から064度550メートルの地点に達し、台船の船首中央部が同灯台から066度550メートルとなったとき、台船の左舷船尾が第二十坂本丸に1メートルばかりに近づいたことを認め、衝突の危険を感じ、急いで機関のクラッチを中立としたものの及ばず、10時30分沓形岬灯台から069度540メートルの地点において、台船が340度に向いたとき、原速力のまま、その左舷船尾角が第二十坂本丸の右舷船首部に、後方から20度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力5の南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 また、第二十坂本丸は、港湾工事などに使用する、船外機を装備した和船型FRP製交通船兼作業船で、船首0.2メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、同日10時15分沓形港日出岸壁北西端の前示衝突地点に移動し、船首を320度に向け、船首尾からそれぞれ係留索をとり、岸壁に左舷出船付けで着岸しのち無人状態で係留されていたところ、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、第五坂本丸及び台船には損傷がなかったものの、第二十坂本丸は、右舷船首部外板に亀裂を生じて浸水し、係留索に繋がれたまま水船状態となり、のち修理された。

(原因)
 本件衝突は、北海道沓形港において、第五坂本丸引船列が、日出岸壁から対岸の東防波堤南側に転係する際、回頭措置が不適切で、右舷前方の同岸壁北西端に係留中の第二十坂本丸に著しく接近して右旋回したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沓形港において、日出岸壁南東端付近から対岸の東防波堤南側に転係するため、台船を船尾方に引き右旋回して進行する場合、右舷前方の同岸壁北西端に係留中の第二十坂本丸に著しく接近しないよう、舵及び機関を適宜使用して台船の船首を大きく右に振ったのち大角度で右旋回するなど、回頭措置を適切に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、折から左舷方から風力5の南西風が吹いているから大回りして大丈夫と思い、回頭措置を適切に行わなかった職務上の過失により、第二十坂本丸に著しく接近して右旋回し、同船と台船の左舷船尾との衝突を招き、第二十坂本丸の右舷船首部外板に亀裂を生じさせ、同船を水船状態とするに至った。


参考図
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