(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年12月11日02時10分
平戸瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第十二増丸 |
総トン数 |
114.56トン |
全長 |
36.05メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
661キロワット |
3 事実の経過
第十二増丸(以下「増丸」という。)は、船首船橋型鋼製漁船であったところ、平成6年に漁船登録を抹消して長期間係船したのち、回航する目的で臨時航行許可を受け、A受審人及びB受審人ほか2人が乗り組み、空船のまま、船首1.10メートル船尾3.55メートルの喫水をもって、平成13年12月10日19時00分長崎港を発し、稚内港に向かった。
A受審人は、船橋当直を自身とB受審人との単独6時間交替制とし、出港操船に引き続き船橋当直に就いて長崎県西岸沖を北上し、23時30分伏瀬灯標の東方1.5海里の地点においてB受審人と当直を交替したが、平戸瀬戸通航に備えてそのまま在橋した。
翌11日01時59分B受審人は、平戸大橋橋梁灯(C1灯)(以下「C1灯」という。)から233度(真方位、以下同じ。)1海里の地点に達したとき、針路を053度に定め、機関を全速力前進にかけて7.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
02時02分B受審人は、平戸瀬戸通航に備えて手動操舵に切り替え、同時07分半転針予定地点のC1灯直下に達したが、そのころ左舷前方に大田助瀬灯標の灯火を視認したので、同瀬を離して航過するつもりで同一針路のまま続航した。
02時08分B受審人は、C1灯から053度120メートルの地点に達したとき、田平港の海岸線に沿うよう左転したが、針路が適切でなければ船長から注意があるものと思い、田平港西防波堤を十分に離す針路とすることなく、大田助瀬灯標に気を取られながら同防波堤に著しく接近する針路で北上した。
A受審人は、船橋内右舷側のいすに腰掛けて見張りに当たっていたが、B受審人に任せておけば大丈夫と思って操船の指揮をとらず、大田助瀬灯標や小田助瀬灯標に気を取られてB受審人の操船模様に留意しなかったので、田平港西防波堤に著しく接近する針路であることに気付かなかった。
02時10分少し前A受審人は、船首至近に防波堤を認めて直ちに左舵一杯を令したが及ばず、02時10分田平港西防波堤灯台から151度200メートルの同防波堤に、原速力のまま、320度に向首した増丸の船首部右舷側が10度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東北東風が吹き、南竜埼東方の平戸瀬戸中央部には1ノットの北流があった。
衝突の結果、船首部右舷側に軽微な凹損を生じた。
(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、平戸瀬戸を北上する際、針路の選定が不適切で、田平港西防波堤に著しく接近する針路で進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が、操船の指揮をとらなかったことと、船橋当直者が、防波堤に著しく接近する針路で進行したこととによるものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、平戸瀬戸を北上する場合、同瀬戸は屈曲した狭い水路であったから、操船の指揮をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、船橋当直者に任せておけば大丈夫と思い、操船の指揮をとらなかった職務上の過失により、当直者が田平港西防波堤に著しく接近する針路で進行して衝突を招き、船首部右舷側に軽微な凹損を生じさせるに至った。
B受審人は、夜間、船橋当直に当たって平戸瀬戸を北上する場合、田平港西防波堤を十分に離す針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、針路が適切でなければ船長から注意があるものと思い、田平港西防波堤を十分に離す針路を選定しなかった職務上の過失により、同防波堤に著しく接近する針路で進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。