(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年10月11日16時50分
沖縄県国頭郡国頭村奥間ビーチ
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートアクアプラノ |
登録長 |
5.54メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
128キロワット |
3 事実の経過
アクアプラノは、船首部に客席を、前部右舷側に船外機回転計や速度計などの計器盤及び操縦ハンドルとその右横に船外機操縦レバーを備えた操縦席を、同部左舷側に2人掛けの客席を、後部には客席と同部中央甲板上高さ約1.5メートルのウェイクボードなどの曳航用マストをそれぞれ設けた最大搭載人員8人のFRP製プレジャーボートで、A受審人とウェイクボードのインストラクター(以下「インストラクター」という。)1人が乗り組み、客2人を乗せ、ウェイクボード遊走の目的で、船首0.3メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成13年10月11日16時00分沖縄県国頭郡国頭村の奥間ビーチにあるホテルのJALプライベートリゾートオクマ専用浮桟橋(以下「浮桟橋」という。)を発し、浮桟橋北西方沖合に向かった。
ところで、ウェイクボードは、ボードと呼ばれる一枚の板に両足を固定して横向きに乗り、モーターボートや水上オートバイなどから出したロープ先端のハンドルにつかまり、モーターボートなどに引かれて水上を滑るというものであった。
浮桟橋は、奥間ビーチ北西方に位置する赤丸岬南方約300メートルの32.8メートル頂三角点(以下「三角点」という。)から148度(真方位、以下同じ。)1,130メートルの地点を北西端とし、そこから068度方向に、海岸線とほぼ直角に長さ12メートル幅4メートル深さ0.7メートル水面上の高さ約0.4メートルのFRP製ポンツーン2基を長さ方向に連結して長さ24メートルの浮桟橋とし、長さ36メートル幅2.3メートルの連絡橋を介して浜辺から同桟橋に係留しているモーターボートなどへの乗り降りができるようになっていた。
A受審人は、浮桟橋北西方沖合で客にウェイクボードの乗り方の基本などを教えたあと、インストラクターが模範を示し、それに続いて客にウェイクボードを行わせることとし、16時44分同桟橋北西方約50メートルの地点を発進し、前部左舷側の座席に客2人を座らせ、自らはその右横の操縦席に座って操船に当たり、インストラクターが長さ1.4メートル幅0.4メートルのFRP製ボードに乗り、船尾から延出した長さ約20メートルのナイロン製曳航ロープを張り合わせたのち、機関を半速力前進にかけ、19.0ノットの速力で、ウェイクボードを開始して北西方に向かった。
A受審人は、奥間ビーチから約100メートル沖合の、発進地点付近とその北西方約800メートル間を同ビーチに沿って数回往復して航走し、客にインストラクターが滑る様子を見させたのち、16時49分半ごろ発進地点付近に戻り、模範演技を終えたインストラクターを浮桟橋基部付近の波打ち際に降ろすため右旋回を始めた。
16時49分41秒A受審人は、浮桟橋北西端から287度110メートルの、三角点から152度1,050メートルの地点に達したとき、針路を同桟橋に平行する068度に定め、19.0ノットの速力で進行した。
16時49分50秒A受審人は、浮桟橋北西端を158度70メートルに見る、三角点から147度1,060メートルの地点に達したとき、操縦ハンドルを右にとり、曳航ロープを放してゆっくりと右旋回を始めたが、後方を向いて、ボードに乗ったインストラクターが波打ち際に向かって水上を滑っていくのを見ることに気をとられ、前方の見張りを十分に行わなかったので、同桟橋に著しく接近する状況となったことに気付かないまま旋回を続けた。
アクアプラノは、16時50分直前A受審人がふと前方に目を移したとき、浮桟橋に約10メートルまで接近したことに気付き、慌てて操縦ハンドルを右一杯にとったが及ばず、16時50分三角点から148度1,130メートルの地点において、船首が228度を向いたとき、原速力のまま、左舷船尾部が浮桟橋北西端に20度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
衝突の結果、アクアプラノは左舷船尾部外板に破口を生じ、のち修理され、浮桟橋はその北西端に擦過傷を生じた。また、客のM及びYが衝突の衝撃で頚椎捻挫等を負った。
(原因)
本件浮桟橋衝突は、沖縄県国頭郡国頭村の奥間ビーチにおいて、模範演技を終えたインストラクターを浮桟橋基部付近の波打ち際に降ろすため、同桟橋北西端付近でウェイクボードの曳航ロープを放して右旋回を行う際、見張り不十分で、浮桟橋に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県国頭郡国頭村の奥間ビーチにおいて、模範演技を終えたインストラクターを浮桟橋基部付近の波打ち際に降ろすため、同桟橋北西端付近でウェイクボードの曳航ロープを放して右旋回を行う場合、同桟橋に著しく接近することのないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、後方を向いて、ボードに乗ったインストラクターが波打ち際に向かって水上を滑っていくのを見ることに気をとられ、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、浮桟橋に著しく接近していることに気付かないまま旋回を続けて同桟橋との衝突を招き、アクアプラノの左舷船尾部外板に破口を、浮桟橋北西端に擦過傷をそれぞれ生じさせ、客2人に頚椎捻挫等を負わせるに至った。