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平成14年門審第30号
件名

プレジャーボートエスペランザのり網施設衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年8月7日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(千手末年)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:エスペランザ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
エスペランザ・・・プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損
のり網施設・・・のり網3枚が損傷

原因
エスペランザ・・・見張り不十分

裁決主文

 本件のり網施設衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年1月1日05時30分
 博多港妙見岬沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートエスペランザ
全長 7.06メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 139キロワット

3 事実の経過
 エスペランザは、船内外機を備え、船体中央後部右舷側に操縦席を設けたFRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、友人3人を乗せ、初日の出を見る目的で、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年1月1日05時20分博多港西福岡マリーナを発し、同港第4区の長垂鼻沖合の海域に向かった。
 ところで、当時、同港第4区東部の妙見岬沖合には、福岡市西区の小戸山三角点から253度(真方位、以下同じ。)600メートルの地点を基点とし、基点から北方に504メートルの地点(以下「イ点」という。)、イ点から西方に1,008メートルの地点(以下「ロ点」という。)、ロ点から南方に504メートルの地点(以下「ハ点」という。)、これらの各点を結ぶ長方形の水域内に、福岡市漁業協同組合が設置したベタと称する浮流方式ののり養殖施設(以下「のり網施設」という。)があり、その外周の、北側、西側及び南側には、紅色点滅式の簡易標識灯が約120メートル間隔で設置されていたが、東側は陸岸に近いことや出入口にあたることから、同標識灯が南北両端部付近にのみ設置され、北側の同標識灯(以下「北東端部標識灯」という。)がイ点から約40メートル南方に、南側の同標識灯(以下「南東端部標識灯」という。)が基点から約40メートル北方にそれぞれ1個設置されていた。
 A受審人は、歯科医院を営むかたわら、日曜日を利用して、主として昼間、レジャー目的で博多湾及びその周辺のクルージングを楽しんでおり、妙見岬の沖にのり網施設が設置されていることや、その外周を示す簡易標識灯が設置されていること、また、その東側においては北端部付近及び南端部付近に同灯各1個が設置されていることを知っていたので、これらの簡易標識灯を目視してその外側を無難に航行していたものの、夜間この付近を航行することはほとんどなかった。
 05時23分少し前A受審人は、小戸山三角点から063度1,100メートルの地点で、針路を269度に定め、機関を微速力前進に掛け、6.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)とし、同時26分少し前同三角点から040.5度640メートルの地点に達したころ、機関の回転を半速力に上げ、10.0ノットの速力で、操縦席に立った姿勢で手動操舵によって進行した。
 05時28分少し過ぎA受審人は、小戸山三角点から328度560メートルの地点で、針路を長垂山の麓にある喫茶店の外灯に向く217度に転じたとき、右舷前方にのり網施設の北側を示す標識灯の数灯を視認したものの、右舷船首20度330メートルのところに北東端部標識灯を、左舷船首13度670メートルのところに南東端部標識灯をそれぞれ視認し得る状況であったが、夜間航行に不慣れで、船首目標の喫茶店の外灯が気に掛かり、周囲の見張りを十分に行わなかったので、北東端部及び南東端部両標識灯を見落としたまま続航した。
 05時29分少し過ぎA受審人は、小戸山三角点から294度550メートルの地点に達したとき、北東端部標識灯を右舷正横100メートルに、南東端部標識灯を左舷船首24度370メートルにそれぞれ視認し得る状況となり、のり網施設に向首進行する態勢となっていたが、依然、船首目標の外灯が気に掛かり、周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、左転して同施設の南東端部を替わさないまま進行した。
 こうして、A受審人は、そのまま続航中、05時30分小戸山三角点から273度630メートルの地点において、エスペランザは、原針路、原速力のまま、その船首がのり網施設に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期で、日出は07時22分であった。
 衝突の結果、エスペランザは、プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損を生じ、のり網施設は、のり網3枚が損傷したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件のり網施設衝突は、夜間、のり網施設が設置された博多港妙見岬沖合を南下中、見張り不十分で、のり網施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、のり網施設が設置された博多港妙見岬沖合を南下する場合、同沖合にはのり網施設の設置区域を示す簡易標識灯が設置されていたから、同標識灯を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、夜間航行に不慣れで、船首目標の喫茶店の外灯が気に掛かり、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同施設の北東端部及び南東端部を示す両簡易標識灯を見落とし、同施設に向首していることに気付かず進行して衝突を招き、エスペランザのプロペラ軸及びプロペラ翼を曲損させ、のり網3枚に損傷を生じさせるに至った。





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