日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年神審第36号
件名

貨物船第参拾宝来丸プレジャーボートさんふらわあ2衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年8月29日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:第参拾宝来丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:さんふらわあ2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
宝来丸・・・右舷船首部に擦過傷
さ 号・・・右舷中央部外板に破口等

原因
宝来丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
さ 号・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第参拾宝来丸が、見張り不十分で、漂泊中のさんふらわあ2を避けなかったことによって発生したが、さんふらわあ2が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月13日07時15分
 兵庫県家島南岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第参拾宝来丸 プレジャーボートさんふらわあ2
総トン数 499トン  
全長 61.73メートル  
登録長   8.9メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 84キロワット

3 事実の経過
 第参拾宝来丸(以下「宝来丸」という。)は、砂利・石材の運搬に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉で船首0.8メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成13年11月13日07時07分坊勢港長井4号防波堤灯台(以下「4号灯台」という。)から018度(真方位、以下同じ。)380メートルの地点を発し、兵庫県家島諸島男鹿島西岸の石材積込場に向かった。
 A受審人は、船橋において1人で発航操船に当たり抜錨後間もなく、家島南東端沿岸寄りを西行中の漁船2隻を認め、増速しながら機関を港内全速力前進として東行中、07時13分4号灯台から084度900メートルの地点において、針路を108度に定め、7.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針時、A受審人は、正船首方430メートルに、漂泊中のさんふらわあ2(以下「さ号」という。)を認め得る状況であったが、左舷対左舷で替わる態勢の、前示漁船の来航模様に気を取られ、船首方の見張りを十分に行うことなく、さ号の存在に気付かずに続航した。
 こうして、A受審人は、さ号を避けずに進行中、07時15分4号灯台から092度1,350メートルの地点において、宝来丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、さ号の右舷中央部に、前方から46度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、船尾部で荷役準備作業中の乗組員からの知らせで衝突を知り、事後の措置をとった。
 また、さ号は、船体中央部に操縦席等のあるハウスを設けたFRP製のプレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日05時00分家島真浦の定係地を発し、06時30分衝突地点付近に至り、機関を中立として漂泊し、ハウス左舷側中央部の通路に立ち、右舷側に大角度の死角を生じる状況で魚釣りを行った。
 07時13分B受審人は、船首が242度に向いていたとき、右舷船首46度430メートルに、来航中の宝来丸を認め得る状況であったが、操縦席に近いところにいれば大丈夫と思い、同船を見落とさないよう、死角を補える船尾部に移動するなどして、右舷側の見張りを十分に行うことなく、宝来丸の存在に気付かずに魚釣りを続けた。
 こうして、B受審人は、宝来丸が衝突のおそれがある態勢のまま接近していることに気付かず、機関を使用するなどして、衝突を避けるための措置をとらずに漂泊中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、宝来丸は、右舷船首部に擦過傷を生じ、さ号は、右舷中央部外板に破口等を生じて転覆し、のち最寄りの造船所に引き寄せられたが、船体中央部等の損傷が大きく、修理費との関連で廃船とされた。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県家島南岸沖合において、東行中の宝来丸が、見張り不十分で、漂泊中のさ号を避けなかったことによって発生したが、さ号が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県家島南岸沖合を東行する場合、正船首方で漂泊中のさ号を見落とさないよう、船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷対左舷で替わる態勢の漁船の来航模様に気を取られ、船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、さ号の存在に気付かず、同船を避けずに進行して衝突を招き、自船の右舷船首部に擦過傷を生じさせ、さ号の右舷中央部外板に破口等を生じて転覆させ廃船させるに至った。
 B受審人は、兵庫県家島南岸沖合において、機関を中立として漂泊し魚釣りを行う場合、ハウス左舷側中央部の通路に立って魚釣りを行うと、右舷側に大角度の死角を生じる状況であったから、右舷側から来航中の宝来丸を見落とさないよう、死角を補える船尾部に移動するなどして、右舷側の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操縦席に近いところにいれば大丈夫と思い、右舷側の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、宝来丸が衝突のおそれがある態勢のまま接近していることに気付かず、機関を使用するなどして、衝突を避けるための措置をとらず、魚釣りを続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:25KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION