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平成14年神審第29号
件名

漁船第八十八祥福丸貨物船ガーディアン エンジェル衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年8月22日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正、前久保勝己、村松雅史)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:第八十八祥福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
祥福丸・・・船首部を圧壊
ガ 号・・・左舷中央部外板等に凹損及び擦過傷

原因
祥福丸・・・船橋当直の維持不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
ガ 号・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第八十八祥福丸が、船橋当直の維持が不十分で、前路を左方に横切るガーディアン エンジェルの進路を避けなかったことによって発生したが、ガーディアン エンジェルが、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月20日03時30分
 宮崎県都井岬南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八十八祥福丸
総トン数 19トン
登録長 15.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 558キロワット

船種船名 貨物船ガーディアンエンジェル
総トン数 17,429トン
全長 170.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 5,884キロワット

3 事実の経過
 第八十八祥福丸(以下「祥福丸」という。)は、まぐろはえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的で、船首1.3メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成13年3月18日08時00分宮崎県油津港を発し、同県都井岬南東方沖合130海里付近の漁場に向かった。
 翌19日02時00分A受審人は、北緯29度45分東経133度05分の地点に到着し、漂泊して休息後、05時00分から第1回目の投縄を行い、09時10分に終了し、再び漂泊して休息したのち、12時48分から揚縄を開始し、23時55分ごろ揚縄を終了したが、漁獲が思わしくないので漁場を約40海里東方に移動することとした。
 翌々20日00時00分A受審人は、北緯29度44分東経132度54分の地点において、単独で航海当直に就き、所定の灯火を表示し、針路を086度(真方位、以下同じ。)に定め、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、自動操舵により進行した。
 A受審人は、その後操舵室内で見張りに当たっていたところ、以前からの腰痛が極度に悪化し、船橋当直を継続することができなくなったが、周囲に船舶が見当たらないので少しの間ならよかろうと思い、他の乗組員を呼んで交替するなど、船橋当直の維持を十分に行う措置をとることなく、03時10分同室後部のベッドに横になった。
 こうして、祥福丸は、A受審人がその後寝入ってしまったまま東行し、03時23分北緯29度44.9分東経133度25.9分の地点に達したとき、右舷船首47度2.0海里のところに、ガーディアン エンジェル(以下「ガ号」という。)の白、白、紅3灯を視認することができる状況で、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、その進路を避けることができないで続航中、03時30分北緯29度45分東経133度27分の地点において、原針路原速力のままの祥福丸の船首部が、ガ号の左舷中央部に直角に衝突した。
 当時、天候は曇で風力1の西南西風が吹き、視界は良好であった。
 また、ガ号は、船尾船橋型貨物船で、二等航海士Sほか19人が乗り組み、ニッケル鉱石27,460トンを積載し、船首9.73メートル船尾9.80メートルの喫水をもって、同月8日16時45分(現地時間)ニューカレドニア ナケティ港を発し、宮崎県細島港に向かった。
 越えて同月20日00時00分S二等航海士は、操舵手を伴い船橋当直に就き、03時15分北緯29度41.9分東経133度28.3分の地点で、所定の灯火を表示し、針路を340度に定め、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの速力で、自動操舵により進行した。
 03時23分S二等航海士は、北緯29度43.6分東経133度27.6分の地点に達したとき、左舷船首27度2.0海里のところに、祥福丸の白、緑2灯を初めて視認し、その動静を監視するうち、同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったので、警告信号を行いながら続航した。
 その後、S二等航海士は、祥福丸が自船の進路を避けないまま間近に接近したが、速やかに右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとることなく進行し、祥福丸が左舷船首至近に迫り、ようやく衝突の危険を感じ、操舵手に右舵一杯を令したが及ばず、ガ号は、船首が356度を向いたとき、原速力のまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、祥福丸は、船首部に圧壊を、ガ号は、左舷中央部外板などに凹損及び擦過傷をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因の考察)
 本件は、事実から横切り船の航法を適用して律すべき事案であることは明白である。
 避航船である祥福丸側の原因は、事実認定のとおり、A受審人が、漁場移動のため単独で船橋当直中、以前からの腰痛が極度に悪化し、船橋当直を継続することができなくなり、当直に就いてから約3時間後に操舵室後部のベッドに横になり寝入ってしまい、船橋当直者不在の状態としたことであり、その結果、祥福丸は、ガ号を視認することも、同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していたのに、その進路を避けることもできないまま進行して衝突を招いたものである。
 従って、このような場合、A受審人は、自らに代わって船橋当直に当たる者、すなわち、他の乗組員を呼んで交替するなど、船橋当直者不在の状態での航行を回避する必要があったもので、排除要因としては、船橋当直の維持不十分としたものである。

(原因)
 本件衝突は、夜間、宮崎県都井岬南東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、東行中の祥福丸が、船橋当直の維持が不十分で、前路を左方に横切るガ号の進路を避けなかったことによって発生したが、北上中のガ号が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、宮崎県都井岬南東方沖合において、漁場移動のため単独の船橋当直中、以前からの腰痛が極度に悪化し、船橋当直を継続することができなくなった場合、他の乗組員を呼んで交替するなど、船橋当直の維持を十分に行う措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、周囲に船舶が見当たらないので少しの間ならよかろうと思い、船橋当直の維持を十分に行う措置をとらなかった職務上の過失により、操舵室後部のベッドに横になり寝入ってしまい、ガ号の進路を避けることができないまま進行して衝突を招き、祥福丸の船首部に圧壊を、ガ号の左舷中央部外板などに凹損及び擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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