(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年9月16日13時30分
京都府舞鶴港北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
引船第三十五明神丸 |
台船(吉)2002 |
総トン数 |
178トン |
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全長 |
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50.00メートル |
登録長 |
30.14メートル |
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幅 |
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18.00メートル |
深さ |
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2.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
1,213キロワット |
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船種船名 |
プレジャーボート瓦 |
全長 |
6.00メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
44キロワット |
3 事実の経過
第三十五明神丸(以下「明神丸」という。)は、鋼製引船で、A受審人ほか3人が乗り組み、船首2.2メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、鋼材等180トンを積載し、船首尾0.6メートルの等喫水となった台船<MG
CHAR="○","吉" size="7"0.0>2002(以下「台船」という。)を船尾に引き、明神丸の船尾から台船の船尾までの長さ約300メートルの引船列(以下「明神丸引船列」という。)とし、平成13年9月14日13時50分山口県長府港を発し、京都府舞鶴港へ向かった。
A受審人は、関門海峡を西行したのち、船橋当直を自らと一等航海士とがそれぞれ単独で行う6時間2直制とし、越えて16日11時00分ごろ船橋当直に就いて丹後半島に沿って東行し、13時08分少し前丹後鷲埼灯台から028度(真方位、以下同じ。)3.5海里の地点で、針路を舞鶴港に向かう181度に定め、機関を全速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
A受審人は、目的地に近づいたことから、入出港届等の書類作成作業を行うこととし、船橋右舷後部の海図台に赴き、右舷方を向いて同作業を行っていたところ、13時24分丹後鷲埼灯台から053度2.0海里の地点に達したとき、正船首方0.7海里のところに、静止している瓦を視認することができる状況であったが、同作業に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかったので、同船の存在に気付かなかった。
A受審人は、その後瓦の静止状況から、船首を北に向けて錨泊中であることが分かる同船に、衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、瓦を避けることなく進行し、13時30分丹後鷲埼灯台から072度1.7海里の地点において、明神丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、瓦の船首部にほぼ平行に衝突した。
当時、天候は曇で風力4の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、波高約2メートルの風浪があった。
A受審人は、瓦との衝突に気付かずに舞鶴港に入港したのち、海上保安部の調査により瓦との衝突を知った。
また、瓦は、FRP製プレジャーボートで、Iが船長として1人で乗り組み、魚釣りの目的で、知人1人を同乗させ、船首尾0.4メートルの等喫水をもって、同日09時10分京都府宮津港を発し、鷲埼東岸沖合の釣り場へ向かった。
10時00分I船長は、前示衝突地点付近に至り、水深約70メートルのところで機関を停止のうえ、船首部から重さ10キログラムの鋼製錨を投じ、太さ20ミリメートルの錨索を約100メートル延出し、錨泊中の形象物を掲げずに錨泊した。
I船長は、救命胴衣を着用しないまま船尾甲板で釣りを始め、13時24分船首を000度に向けていたとき、正船首方0.7海里のところに自船に向首した明神丸を初めて認め、その動静を見守るうち、同船が衝突のおそれのある態勢で接近するのを知ったが、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、間近に接近したとき、速やかに機関を始動して移動するなど、衝突を避けるための措置をとることもなく、錨泊を続けた。
こうして、I船長は、明神丸が至近に迫ったとき、ようやく危険を感じて同乗者とともに海中へ飛び込んだ直後、瓦は、000度に向首したまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、明神丸は、船首部外板に擦過傷を、瓦は、船首部外板に擦過傷及び船橋に損壊をそれぞれ生じ、また、I船長(昭和37年2月17日生、四級小型船舶操縦士免状受有)が行方不明となった。
(原因)
本件衝突は、京都府舞鶴港北方沖合において、航行中の明神丸引船列が、見張り不十分で、錨泊中の瓦を避けなかったことによって発生したが、瓦が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、京都府舞鶴港北方沖合を同港に向け航行する場合、錨泊中の瓦を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、書類作成作業に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、瓦の存在に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の船首部外板に擦過傷を、瓦の船首部外板に擦過傷及び船橋に損壊をそれぞれ生じさせ、また、I船長を行方不明とさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。