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平成14年神審第37号
件名

漁船第六漁吉丸プレジャーボートオーシャン衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年8月1日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:第六漁吉丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:オーシャン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
漁吉丸・・・右舷船首部に凹損
オーシャン・・・右舷船尾端に擦過傷、同乗者2人がそれぞれ左手指打撲傷、頸部打撲傷

原因
漁吉丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
オーシャン・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第六漁吉丸が、見張り不十分で、錨泊中のオーシャンを避けなかったことによって発生したが、オーシャンが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月17日09時20分
 播磨灘北部

2 船舶の要目
船種船名 漁船第六漁吉丸 プレジャーボートオーシャン
総トン数 10トン  
全長   8.23メートル
登録長 16.00メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力   95キロワット
漁船法馬力数 120  

3 事実の経過
 第六漁吉丸(以下「漁吉丸」という。)は、軽合金製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、しらす漁の魚群探索目的で、船首0.2メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成13年11月17日05時40分兵庫県坊勢漁港を発し、播磨灘北部の漁場に向かった。
 A受審人は、上島の南東方沖合で魚群探索を行っていたところ、魚影が見当たらないので、同島北方を経て西方に向かうこととし、09時12分少し過ぎ上島灯台から093度(真方位、以下同じ。)1,550メートルの地点において、針路を295度に定め、機関を半速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 ところで、魚群探索は、航行しながら操舵室左舷前部に備えた魚群探知機の映像を見て魚影の濃淡を識別するものであった。
 09時18分A受審人は、上島灯台から355度670メートルの地点に達したとき、魚影が見当たらず、針路を250度に転じたところ、正船首方620メートルのところに、船首を北西方に向けて静止状態にあるオーシャンを視認し得る状況であったが、魚群の探知に気を取られ、前方の見張りを十分に行わなかったので、オーシャンの存在に気付かなかった。
 A受審人は、オーシャンが錨泊中の形象物を表示していないものの、折からの風向と静止状況から、錨泊中であることが分かる同船に、衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、オーシャンを避けることなく続航中、09時20分少し前間近に同船を視認し、左舵一杯を取ったが及ばず、09時20分上島灯台から305度820メートルの地点において、漁吉丸は、船首が225度を向いたとき、原速力のまま、その右舷船首部が、オーシャンの右舷船尾端に直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、視界は良好であった。
 また、オーシャンは、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日08時00分兵庫県東播磨港を発し、上島北西方沖合の釣り場に向かった。
 B受審人は、08時30分衝突地点付近に至り、水深約21メートルのところで機関停止のうえ、船首部から重さ7キログラムの鋼製錨を投じ、長さ1.5メートルの錨鎖に長さ40メートル直径12ミリメートルの合成繊維索を繋いだものを延出して錨泊し、錨泊中の形象物を表示しないまま、左舷船首部と同舷船尾部に友人を座らせ、自らは右舷船尾部に座り、同舷方を向いて竿釣りを開始した。
 09時18分B受審人は、船首が315度に向いていたとき、右舷船尾65度620メートルのところに、来航する漁吉丸を視認できる状況であったが、釣りに気を取られ、同船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行わなかったので、漁吉丸の存在に気付かなかった。
 こうして、B受審人は、その後漁吉丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、備えてある笛を吹くなど、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、間近に接近したとき、機関をかけて衝突を避けるための措置をとることもなく、竿釣りを続けた。
 09時20分わずか前B受審人は、至近に迫った漁吉丸を初めて視認し、衝突を避けようとして機関を始動した直後、オーシャンは、船首を315度に向いたまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、漁吉丸は右舷船首部に凹損を生じ、オーシャンは右舷船尾端に擦過傷を、船外機及び予備の船外機にそれぞれ破損を生じたが、のちいずれも修理され、また、オーシャンの同乗者2人がそれぞれ左手指打撲傷、頚部打撲傷などを負った。

(原因)
本件衝突は、播磨灘北部において、西行中の漁吉丸が、見張り不十分で、錨泊中のオーシャンを避けなかったことによって発生したが、オーシャンが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、播磨灘北部において、魚群探知機により魚群を探索しながら西行する場合、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚群の探知に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、オーシャンの存在に気付かず、錨泊中の同船を避けないまま進行してオーシャンとの衝突を招き、漁吉丸の右舷船首部に凹損を生じさせ、オーシャンの右舷船尾端に擦過傷を、船外機及び予備の船外機にそれぞれ破損を生じさせ、オーシャンの同乗者2人にそれぞれ左手指打撲傷、頚部打撲傷などを負わせるに至った。
 B受審人は、播磨灘北部において、錨泊して釣りを行う場合、漁吉丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣りに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同船の存在と接近とに気付かず、機関をかけて衝突を避けるための措置をとらずに錨泊を続けて漁吉丸との衝突を招き、前示の損傷と負傷とを生じさせるに至った。


参考図
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