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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年門審第62号
件名

漁船新光丸漁船金比羅丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年7月31日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(千手末年、河本和夫、橋本 學)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:新光丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士
B 職名:金比羅丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
新光丸・・・左舷船首部外板を圧壊
金比羅丸・・・船首部及び同部左舷側の外板に破口を伴う亀裂

原因
金比羅丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

主文

 本件衝突は、金比羅丸が、見張り不十分で、漂泊中の新光丸に向けて転舵したことによって発生したものである。
 受審人Bの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年8月24日06時40分
 大分県関埼北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船新光丸 漁船金比羅丸
総トン数 4.2トン 4.0トン
登録長 9.92メートル 9.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 80 90

3 事実の経過
 新光丸は、船体中央後部に操舵室を設けたFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、たちうお曳縄釣(ひきなわつり)漁を行う目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成11年8月24日04時30分大分県佐志生漁港を発し、05時30分関埼の北方8海里ばかりの漁場に至り、操業を開始した。
 ところで、新光丸のたちうお曳縄釣漁具は、幹縄に直径約5ミリメートルのワイヤーロープを使用し、その先端に取り付けたサルカンに、6キログラムの鉛の重りと、40号のナイロン糸で長さ240メートルの枝糸とを取り付け、同枝糸に10号のナイロン糸で長さ約3メートルの釣糸80本を等間隔に取り付けていた。
 06時24分ごろA受審人は、関埼灯台から001度(真方位、以下同じ。)8.9海里の地点で、船尾から曳縄釣漁具を投入し、幹縄を100メートルばかり繰り出して第2回目の曳縄にかかり、針路を290度に定め、1.7ノットの曳縄速力で、甲板員に前部甲板でたちうおの整理作業を行わせながら、手動操舵で進行した。
 06時37分半A受審人は、関埼灯台から358度9.1海里の地点で、船首を北西方に向け、機関を中立運転として行きあしを止め、船尾部右舷側にある揚縄機のローラを介して幹縄の巻揚げ作業を開始し、その後船首がゆっくり右転する状況のもと、漂泊状態で揚縄中、06時40分関埼灯台から358度9.1海里の地点において、新光丸は、船首が017度を向いた状態で、その左舷船首部に金比羅丸の船首が前方から75度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好で、海上は平穏であった。
 また、金比羅丸は、船体中央後部に操舵室を設けたFRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、たちうお曳縄釣漁を行う目的で、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日05時00分大分県加貫漁港を発し、杵築湾口で30分ばかり操業したのち、伊予灘西航路第1号灯浮標付近の漁場に向けていたところ、東方沖合に多数の漁船を認めたことから、これらの付近で魚群探索をすることにし、06時02分臼石鼻灯台から093度2.0海里の地点で、東行を開始した。
 06時30分B受審人は、左舷前方1海里ばかりのところで、漁船2隻が南北に並んで西方に向いて揚縄中であることを知り、これらの船首側を替わって北上することとし、同時35分関埼灯台から357度8.3海里の地点で、機関を半速力前進に掛け、10.0ノットの対地速力で、針路を000度に定めたとき、正船首少し右方1,400メートルのところに新光丸を視認できる状況のもと、手動操舵によって進行した。
 B受審人は、認めていた2隻のうちの北側の漁船を替わって右転したのち、その右舷側からたちうおの掛かり具合を見ることにして続航し、06時39分半少し前関埼灯台から357.5度9.0海里の地点に達したとき、右舷船首16度170メートルのところに船首を北方に向けて漂泊している新光丸を視認でき、北側の漁船を航過してすぐに右転すれば、新光丸と衝突の危険が生じる状況であったが、近くには認めていた2隻以外に他船はいないと思い、魚群探知器で魚影反応を見ることに気をとられ、転舵方向に対する見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 06時39分半少し過ぎB受審人は、北側の漁船を右舷側に30メートルばかりで航過したとき、新光丸を右舷船首至近に認め得る状況であったが、依然として転舵方向の見張りを十分に行っていなかったので、新光丸に気付かず、同漁船の右舷側に回り込むつもりで、同時40分少し前右舵約20度をとったところ、新光丸に向けて転舵することとなり、金比羅丸は、船首が122度を向いたとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、新光丸は左舷船首部外板を圧壊し、金比羅丸は船首部及び同部左舷側の外板に破口を伴う亀裂を生じたが、のち両船とも修理された。

(原因)
 本件衝突は、大分県関埼北方沖合において、北上中の金比羅丸が、転舵方向に対する見張りが不十分で、漂泊中の新光丸に向けて至近距離で転舵したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、大分県関埼北方沖合において、操業中の漁船が散在する海域を北上中、揚縄中の漁船の漁模様を見ようとして転舵する場合、転舵方向に存在する他船を見落とさないよう、同方向に対する見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、近くには認めていた2隻の漁船以外に他船はいないと思い、魚群探知器で魚影反応を見ることに気をとられ、転舵方向に対する見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、揚縄作業で漂泊している新光丸に気付かず、同船に向け転舵して衝突を招き、新光丸の左舷船首部外板を圧壊させ、金比羅丸の船首部及び同部左舷側の外板に破口を伴う亀裂を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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