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平成14年仙審第26号
件名

プレジャーボートこんの丸プレジャーボート優花丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年7月11日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(亀井龍雄)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:こんの丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:優花丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
こんの丸・・・左舷船首部に亀裂を伴う凹損、船長が左大腿骨を骨折
優花丸・・・右舷船首部に亀裂を伴う凹損

原因
こんの丸・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
優華丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、こんの丸が、動静監視不十分で、優花丸との衝突を避けるための措置をとらなかったことと、優花丸が、見張り不十分で、こんの丸との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月3日13時40分
 福島県猪苗代湖北西沿岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートこんの丸 プレジャーボート優花丸
登録長 2.51メートル 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 80キロワット 80キロワット

3 事実の経過
 こんの丸は、FRP製水上オートバイで、A受審人が1人で乗り組み、遊走の目的で、平成14年5月3日13時32分福島県猪苗代湖北西岸にある株式会社磐梯マリーン(以下「磐梯マリーン」という。)のマリーンジェットスロープを発した。
 A受審人は、平成13年9月磐梯マリーンの会員となり、マリーンジェットスロープの50メートル沖合にある同社管理の水上オートバイ用公認レースコース(以下「レースコース」という。)で遊走を行っており、こんの丸での航走総時間は20時間ほどであった。
 A受審人は、操縦席に腰掛けてハンドルを両手で握り、スロットルを操作して発進し、何隻かの水上オートバイがレースコースを次々と遊走しているので、同コースの50メートルほど沖合で暖機運転をしながら同コースが空くのを待ち、13時33分30秒コースイン、同時34分コースアウトして南方沖合に向かった。
 A受審人は、1キロメートルほど沖合で遊走したのち、帰途につくため北上し、13時39分50秒浮桟橋先端から212度(真方位、以下同じ。)115メートルの地点で、針路を027度に定め、時速40キロメートルの対地速力としたとき、前方100メートルに優花丸を認めた。
 A受審人は、優花丸を一瞥(いちべつ)しただけで、その航走状況を確かめることなく、漠然と左舷側に替わそうと思い、まもなくわずかに右にハンドルを切って徐々に右回頭を始めた。
 A受審人は、右回頭する方向だけを見ていて優花丸に対する動静監視を行わなかったので、優花丸が前方で左回りに楕円を描くように旋回しており、更に大きく右転しないと自船の進行方向がその旋回圏内にあり、優花丸に著しく接近する状況であることに気付かないまま進行した。
 A受審人は、優花丸の旋回径の外側に向かうよう更に大きく右転することなく進行し、13時39分59.5秒左前方5メートルに優花丸が迫っていることに気付き「アーッ。」という声を発したが、どうすることもできず、13時40分浮桟橋先端から193度15メートルの地点において、こんの丸の船首が090度に向首したとき、原速力のまま、その左舷船首部が優花丸の右舷船首部に後方から75度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の南東風が吹き、視界は良好であった。
 また、優花丸は、FRP製水上オートバイで、B受審人が1人で乗り組み、遊走の目的で、同日13時38分磐梯マリーンのマリーンジェットスロープを発した。
 B受審人は、平成10年7月磐梯マリーンの会員となり、毎年5月から9月の間の毎日曜日同マリーンのレースコースで遊走を行っていた。
 B受審人は、操縦席に腰掛けてハンドルを両手で握り、スロットルを操作して発進し、レースコースが空いていたので、直ちにコーススタート地点に向かい、13時38分20秒コースイン、同時39分コースアウトして前示衝突地点付近に向かった。
 13時39分30秒B受審人は、衝突地点付近でスロットルをアイドリング状態とし、時速5キロメートルの対地速力で、長径10メートル短径5メートルほどの楕円を描き、左回りに旋回しながらレースコースが空くのを待った。
 B受審人は、北東方のレースコースの方を見ながら旋回を続け、13時39分50秒南西方100メートルにこんの丸が存在し、やがてこんの丸が徐々に右転を始めて自分の旋回圏内に向かっており、著しく接近する状況であったが、南西方の見張りを十分に行っていなかったのでこのことに気付かなかった。
 B受審人は、旋回を止めるなり、こんの丸の進行方向から離れるなりすることなく旋回を続け、13時39分59.5秒「アーッ。」という声を聞き、右後方5メートルに迫ったこんの丸を認めたが、どうすることもできず、優花丸の船首が165度に向首したとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、こんの丸は左舷船首部に亀裂を伴う凹損及び後部シートに亀裂を、優花丸は右舷船首部に亀裂を伴う凹損を生じたが、のち、それぞれ修理され、A受審人が左大腿骨を骨折した。

(原因)
 本件衝突は、福島県猪苗代湖北西沿岸において、両水上オートバイがレースコース付近で遊走中、こんの丸が、動静監視不十分で、優花丸との衝突を避けるための措置をとらなかったことと、優花丸が、見張り不十分で、こんの丸との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、猪苗代湖北西沿岸のレースコース付近で遊走中、前方で遊走中の優花丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右転していけば左舷側に替わるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、優花丸と著しく接近して衝突を招き、こんの丸の左舷船首部に亀裂を伴う凹損及び後部シートに亀裂を、優花丸の右舷船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせ、自身は左大腿骨骨折を負うに至った。
 B受審人は、猪苗代湖北西沿岸のレースコース付近で同コースが空くのを待ちながら遊走する場合、付近には他の水上オートバイがいたのであるから、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、レースコースの方を見ることに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、こんの丸と著しく接近して衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。


参考図
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