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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 安全・運航阻害事件一覧 >  事件





平成14年函審第13号
件名

プレジャーボート千勝丸運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成14年5月27日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄)

理事官
堀川康基

損害
アンカーロープがプロペラに絡み航行不能

原因
気象海象に対する配慮不十分

裁決主文

 本件運航阻害は、気象海象の変化に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月15日04時00分
 北海道葛登支岬南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート千勝丸
全長 11.70メートル
幅  2.55メートル
深さ 0.72メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 95キロワット

3 事実の経過
 千勝丸は、専らレジャーに使用されている、船首に操舵室を配置したFRP製プレジャーボートで、船長K(昭和14年7月8日生、四級小型船舶操縦士免状受有、受審人として指定されていたところ、平成14年3月31日死亡したので、これが取り消された。)が1人で乗り組み、いか釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年11月15日02時10分北海道上磯郡当別漁港を発し、同漁港南方沖合の釣り場に向かった。
 ところで、北海道渡島・桧山地方は、当時、発達した低気圧がオホーツク海に、また中国大陸に優勢な高気圧があって西高東低の冬型の気圧配置となっており、海上には波浪注意報が発表され、西ないし北西の季節風がやや強まり波浪が高まる状況となっていた。
 K船長は、02時45分ごろ当別漁港南方約4.5海里の釣り場に至った後、付近で2回場所を変えて釣りを行い、03時20分葛登支岬灯台から175度(真方位、以下同じ。)4.6海里の地点で、巻揚機が装備されていない、直径3メートルのパラシュート型シーアンカー(以下「シーアンカー」という。)を船首から投入し、パラシュート頂端の直径7ミリメートルのハイゼックス製引揚用ロープとパラシュート吊りひも先端に取り付けられた直径12ミリメートルのナイロン製引き索(以下「アンカーロープ」という。)約13メートルとを船首の鉄製たつに結び、機関を停止回転数にかけクラッチを中立として漂泊したのち釣竿を舷側から出し、折からの西風と海潮流により東北東方に少しずつ圧流されながら釣りを再開した。
 間もなくK船長は、最初の釣り場のときと比べ、西風が強まり所々に白波が立つようになった状況を認めたが、これぐらいの風や波ならまだ大丈夫と思い、気象海象の変化に配慮することなく、速やかにシーアンカーを揚収して帰途に就かないまま釣りを続けた。
 こうして、K船長は、03時50分葛登支岬灯台から168度1.5海里の地点において、風と波がさらに増勢する状況となってきたので、ようやくシーアンカーを揚収して帰航することにし、機関を繰り返し前進にかけ引揚用ロープをたぐり寄せようとしたものの、これが思うように引けずにシーアンカーの揚収に手間取っているうち、04時00分葛登支岬灯台から166度4.5海里の地点において、千勝丸は、船首が120度に向いていたとき、たるんだアンカーロープが船底に潜り込んでプロペラに絡み航行不能となった。
 当時、天候は晴で風力5の西風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、付近には約1.0ノットの東北東流があり、波高約1.5メートルの波浪があった。
 その結果、千勝丸は、航行不能となったまま漂流を続け、05時50分K船長が携帯電話で海上保安部に救助を求め、出動した同保安部の航空機に発見された後、巡視艇に曳航されて北海道函館漁港に引き付けられた。

(原因)
 本件運航阻害は、夜間、葛登支岬南方沖合において、シーアンカーを投入し漂泊して魚釣り中、西風が強まり所々に白波が立つようになった際、気象海象の変化に対する配慮が不十分で、速やかにシーアンカーを揚収して帰途に就かず、アンカーロープがプロペラに絡み、航行不能となったことによって発生したものである。





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