(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年1月1日01時30分
京浜港横浜区第5区
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートテイク ファイブ |
全長 |
7.49メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
5キロワット |
3 事実の経過
テイク ファイブは、ディーゼル機関を有するFRP製プレジャーヨットで、A受審人ほか3人が乗り組み、横浜市金沢区の八景島シーパラダイスのカウントダウン花火大会を見物する目的で、平成12年12月31日23時00分同区の横浜ベイサイドマリーナを発し、八景島沖合に向かった。
A受審人は、花火大会を見物したのち、翌13年1月1日00時15分横須賀港東防波堤北灯台から007度(真方位、以下同じ。)1,340メートルの地点を発進し、機関を使用して帰航の途についた。
01時10分A受審人は、横浜金沢木材ふとう東防波堤灯台(以下「ふとう東防波堤灯台」という。)から128度2,560メートルの地点において、針路を同灯台の少し北側に向く311度に定め、機関を全速力前進にかけ、風に抗して2.1ノットの対地速力で進行中、帆を併用して航行することとし、同時20分ふとう東防波堤灯台から127度1,880メートルの地点で、ジブセールを右舷開きに展張して続航した。
01時23分A受審人は、ふとう東防波堤灯台から126度1,700メートルの地点に達したとき、機関の警報ブザーが鳴り、機関が自停したので点検したところ、ジブセールの風上側のシートロープがクリートから抜けて海中に落ち、舷側に張っていたことから、プロペラに同ロープを巻き込んだのを認め、乗組員にメインセールの準備をさせ、自らはジブセールのクリューに取り付けられたシートロープエンドのもやい結びの結び目を解くこととした。
A受審人は、ジブセールを展張したままのテイク ファイブが折からの増勢した北北東風によって圧流され始めたが、シートロープエンドの結び目を解くことに気をとられていて、このことに気づかず、速やかに絡まったシートロープを切断してメインセールにより態勢を立て直すなど風下への圧流を防止する措置をとることなく、1人で作業を続けた。
ところで、横浜市金沢区3号地沖合には、岸壁に沿って横浜市漁業協同組合金沢支所海苔業者グループが、神奈川県知事から区画漁業免許の許可を受け、ふとう東防波堤灯台から179度3,980メートル、178度2,880メートル、175度2,900メートル及び176度4,000メートルの各地点を順次結んだ区画をのり養殖施設とし、夜間には、同施設の東西両側に5個ずつ計10個の黄色4秒1閃光の標識灯が等間隔に設置されていた。
A受審人は、依然として結び目を解くことに固執していて、テイク ファイブが急速に南南西方に圧流され、のり養殖施設に接近していることに気づかず、01時30分テイク ファイブは、ふとう東防波堤灯台から177度2,880メートルの地点において、のり養殖施設の北辺中央部に乗り入れた。
当時、天候は晴で風力4の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
その結果、テイク ファイブは損傷を生じなかったが、のり養殖施設はのり網及び浮子綱等に損傷を生じ、乗組員全員は来援した海上保安庁のヘリコプターにより救助された。
(原因)
本件のり養殖施設損傷は、夜間、京浜港横浜区第5区において、機関に加え、帆を併用して帰航中、海中に落ちたジブセールのシートロープをプロペラに巻き込んだ際、圧流防止措置が不十分で、のり養殖施設に向けて圧流されたことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、京浜港横浜区第5区において、機関に加え、帆を併用して帰航中、海中に落ちたジブセールのシートロープをプロペラに巻き込んだ場合、速やかに同ロープを切断してメインセールにより態勢を立て直すなど風下への圧流を防止する措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、ジブセールのクリューに取り付けられたシートロープエンドの結び目を解くことに気をとられ、圧流を防止する措置をとらなかった職務上の過失により、ジブセールを展張したまま圧流されてのり養殖施設に乗り入れ、テイク ファイブに損傷は生じなかったが、同施設ののり網及び浮子綱等に損傷を生じさせ、乗組員全員は来援した海上保安庁のヘリコプターにより救助されるに至った。