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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成14年仙審第16号
件名

プレジャーボート板戸遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年6月27日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(大山繁樹)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:板戸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
遊泳者が右耳後部挫創

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件遊泳者負傷は、見張りが不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月23日17時00分
 山形県鶴岡市湯野浜地区海岸西方沖

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート板戸
登録長 2.70メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 80キロワット

3 事実の経過
 板戸は、航行区域を限定沿海区域とするFRP製の水上オートバイで、A受審人が操縦席に乗り、後部座席に友人1人を乗せ、山形県鶴岡市湯野浜地区海岸沖合において遊走する目的で、平成12年7月23日16時55分湯野浜ゴルフ場133.9メートル頂三角点(以下「湯野浜ゴルフ場三角点」という。)から309度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点の同海岸を発して北西方沖合に向かった。
 ところで、湯野浜地区海岸は、北西方に面した砂浜で、板戸が発航した付近が水上オートバイなどの遊走するマリンジェット区域、同区域の南側がサーフィンやボディボードを楽しむ区域、さらにその南側が海水浴場となっていたが、サーファー等は高い磯波を求めてマリンジェット区域に入り込むことがあり、A受審人は、発航したとき、マリンジェット区域でサーフィンやボディボードを楽しむ数人の遊泳者を認めた。
 A受審人は、150メートルばかり沖合の消波堤南端付近に至ったころ、磯波が一段と高くなったので、左回りで回頭して波の小さなところを探しながら沖合に向かうこととし、17時00分少し前湯野浜ゴルフ場三角点から310度1,440メートルの地点で、針路を034度に定めたものの、安全な速力とすることなく、21ノットの高速力で海岸線に沿って北北東方に向かった。
 A受審人は、定針したとき、船首わずか右約50メートル水深1メートルのところに、遊泳者が長さ94センチメートル(以下「センチ」という。)幅52センチ厚さ6センチのポリウレタンフォーム製のボディボードを両手に持って、沖合に向かって歩いているのを認めることができる状況であったが、左舷側沖合の磯波の小さいところを探すのに気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかったので、これに気付かないまま進行した。
 A受審人は、同針路、同速力のまま続航し、17時00分湯野浜ゴルフ場三角点から311度1,450メートルの地点において、右舷正横至近にボディボードを持った前示遊泳者を初めて認めたが、どうすることもできずにそのまま通過したところ、航走波の影響で遊泳者が転倒し、その際手放したボードが跳ね上がって遊泳者の頭部に落下した。
 当時、天候は晴で風力4の西南西風が吹き、海上には1メートルばかりの波が寄せていた。
 その結果、遊泳者は、全治2週間の左耳後部挫創を負った。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、水上オートバイ板戸が、山形県鶴岡市湯野浜地区海岸において遊走する際、安全な速力としなかったばかりか、見張り不十分で、前路でボディボードを持った遊泳者の至近を高速力で通過し、航走波により遊泳者が転倒して、手放した同ボードが跳ね上がって遊泳者の頭部に落下したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、遊泳者がサーフィンやボディボードを楽しんでいる山形県鶴岡市湯野浜地区海岸において、水上オートバイ板戸で遊走する場合、前路でボディボードを持った遊泳者を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷側沖合の磯波の小さいところを探すのに気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路でボディボードを持った遊泳者に気付かず、至近を高速力で通過して航走波により遊泳者を転倒させ、手放した同ボードが跳ね上がって遊泳者の頭部に落下する事態を招き、左耳後部挫創を負わせるに至った。





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