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平成13年神審第102号
件名

プレジャーボート石塚号遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年5月20日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:石塚号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:遊泳者

損害
遊泳者が頭部挫創

原因
遊泳区域内で遊泳しなかったこと

裁決主文

 本件遊泳者負傷は、遊泳者が、遊泳区域内で遊泳しなかったことによって発生したものである。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月11日13時30分
 兵庫県湊港北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート石塚号
全長 3.16メートル
登録長 2.70メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 106キロワット

3 事実の経過
 石塚号は、最大搭載人員3人のウォータージェット推進装置を有するFRP製水上オートバイで、船体中央部に操縦ハンドルを備え、その後方から船尾にかけて跨乗式座席が装備されていた。
 A受審人は、自動車3台に知人13人と分乗し、石塚号ほか2隻の水上オートバイ(以下「僚船」という。)を載せ、平成13年8月11日09時30分ごろ兵庫県湊港北東方の慶野松原海水浴場(以下「海水浴場」という。)に着き、間もなく石塚号などを着水させ、交替しながら遊走を行った。
 ところで、海水浴場は、播磨灘に面した淡路島西岸に開設された海域及び海浜で、その遊泳場には、期間を定めて、国民宿舎慶野松原荘の前面付近から北北東方にかけて遊泳区域が指定され、その区域を示すため、海岸線とほぼ平行で80メートル沖合のところに、長さ1,200メートルにわたり、橙色浮体を連ねた標識(以下「標識」という。)が設置されていた。
 また、兵庫県の水難事故等の防止に関する条例により、遊泳場の区域外で遊泳しないことや、遊泳区域に船舟類を乗り入れてはならないことが定められていた。
 13時00分A受審人は、石塚号の操縦ハンドルを操作し、座席後部に同乗者1人を乗せ、船首尾0.2メートルの等喫水をもって、遊泳区域北方の海岸を発し、同区域沖合で発停や旋回を繰り返したのち、僚船1隻と合流して遊走を続けた。
 13時26分少し過ぎA受審人は、湊港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から042度(真方位、以下同じ。)1,130メートルの地点において、僚船に追尾するよう、針路を025度に定め、機関を微速力前進にかけ5.4ノットの対地速力で、標識と平行に約3メートル隔てて遊泳区域沖合を進行した。
 A受審人は、遊泳区域外で遊泳している人を見かけず、僚船と数メートルの距離を保ち、前方と遊泳区域内の知人を見ながら北上中、13時30分西防波堤灯台から035度1,750メートルの地点において、石塚号の船底が、原針路原速力のまま、突然浮上してきた遊泳中の指定海難関係人Bの頭部に接触した。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、B指定海難関係人は、海水浴等の目的で、同日昼ごろ3家族13人とともに海水浴場に到着し、遊泳を始めた。
 13時15分B指定海難関係人は、海浜にいたとき、それまで遊泳区域沖合で遊走していた石塚号と僚船1隻が南下したのを認めたことから、貝を採る目的で、Tシャツとサーフパンツ姿に、シュノーケル、水中眼鏡及びフィンを着用し、浮き輪など目印になる浮体を持たないまま1人で海に入り、海岸から70メートル沖合の遊泳区域内で、約1分間の素潜りを繰り返しながら遊泳を続けた。
 13時29分半B指定海難関係人は、前示の接触地点付近の遊泳区域内で、石塚号が80メートルのところに接近していたとき、水深5メートルの海中に潜り、少し沖合に移動して貝を探していたところ、先行していた僚船の接近する音を聞き、しばらく待って頭上を通過するのを目視し、遊泳区域外に出ていることが分かる状況であったが、標識を確認するなどして同区域内に戻ることなく浮上したところ、前示のとおり接触した。
 その結果、B指定海難関係人が頭部挫創などを負った。
 A受審人は、怒鳴り声を聞いて後方を振り向き、標識につかまっているB指定海難関係人を初めて認め、接触したことを知らされ、負傷した同人を収容して海岸に運び、救急車を手配して病院に搬送した。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、兵庫県湊港北東方の海水浴場において、素潜りを繰り返していた遊泳者が、遊泳区域内で遊泳せず、同区域外で浮上し、遊走中の石塚号に接触したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B指定海難関係人が、素潜りを繰り返しながら遊泳する際、遊泳区域内で遊泳しなかったことは、本件発生の原因となる。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。





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