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平成13年那審第47号
件名

プレジャーボート白熊号転覆事件

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成14年6月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:白熊号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船外機に濡損、燃料タンク等が流失

原因
磯波の危険性に対する配慮不十分

主文

 本件転覆は、磯波の危険性に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月7日13時50分
 沖縄県宮古列島下地島北西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート白熊号
登録長 2.84メートル
1.36メートル
深さ 0.57メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 白熊号は、株式会社ホープ製のH−330Sと称する最大とう載人員が3人で、船外機を備え、船体前部に長さ約35センチメートル(以下「センチ」という。)幅約70センチ高さ約30センチの空気室を、同中央部に長さ約55センチ幅約45センチ高さ約30センチの物入れ兼いけすを、船尾端左右両舷には長さ約35センチ幅約35センチ高さ約20センチの空気室をそれぞれ設けた無甲板型FRP製プレジャーボートで、A受審人が平成13年5月に海技免状取得後同月末に新船を購入し、沖縄県宮古郡伊良部町佐和田の海岸に浜置きしてそれまで休日に5ないし6回同県伊良部島西岸付近などで使用していた。そして、同人が1人で乗り組み、遊走の目的で、船首0.1メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、翌6月7日13時20分下地島空港管制塔(以下「管制塔」という。)から024度(真方位、以下同じ。)2,200メートルの同海岸を発し、同県下地島北西方沖合に向かった。
 ところで、伊良部島の北西端と、同島南西側の数箇所から橋を介して約100メートル隔てたところにある下地島の北西端との間には、幅100ないし200メートルで弧状に拡延した干出さんご礁帯があり、これと陸岸とで囲まれた礁湖は直径約1.4海里水深3.8メートル以下で、同湖内は海面が穏やかであった。そして、発航地の北方約1.2海里と西方約1.5海里には幅約20メートルの外海に通じるさんご礁帯の切れ目があり、そこから外に出ると水深が急に深くなっているので、沖合からのうねりや風浪があるときには、さんご礁帯外縁近くで高起した磯波が発生しやすい地形となっていた。
 発航後、A受審人は、船首方を向いて右舷船尾部に腰掛け、左手で船外機を操作して機関の回転数を徐々に上げながら、伊良部島西岸に沿って約600メートル北上したのち、左転して機関を半速力前進にかけ、3.9ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、西方約2,400メートルのさんご礁帯の切れ目に向かって礁湖内を進行したところ、同切れ目は外海から接近するときと比べて分かりにくいこともあって、発見できないまま続航するうち、13時45分管制塔から325度3,050メートルのさんご礁帯上に到達した。
 そのころ、A受審人は、船外機が海底に接触するような音がしたので、自船から降りて西方のさんご礁帯外縁に向かって押して13時48分管制塔から323度3,200メートルの同外縁に達し、外海に乗り出そうとして沖合を見たところ、西方からの波浪により同外縁に沿って幅約15メートルにわたり高さ約1メートルの白波が立っているのを認めたが、この程度の波高なら大丈夫と思い、波の状況をよく確かめ、外海に乗り出すのを止めるなどの磯波の危険性に対する配慮を十分に行うことなく、針路を275度に定め、機関を微速力前進にかけて1.5ノットの速力で外海に向かった。
 白熊号は、13時50分わずか前突然高起した波高約3メートルの磯波を船首から受け、船体が持ち上げられて船尾側に大傾斜し、13時50分管制塔から322度3,250メートルの地点において、復原力を喪失して船尾側に転覆した。
 当時、天候は晴で風力4の南風が吹き、潮候はほぼ低潮時で、付近には波高約3メートルの磯波があった。
 転覆の結果、船外機に濡損を生じたほか燃料タンク等が流失した。また、A受審人は海中に投げ出されたが、救命胴衣を着用して漂流中、翌8日朝捜索中の海上保安庁の航空機によって発見され、のち巡視艇により救助された。

(原因)
 本件転覆は、沖縄県下地島北西方沖合のさんご礁帯外縁において、磯波の危険性に対する配慮が不十分で、磯波が発生している外海に乗り出し、突然高起した同波を船首から受けて船尾側に大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県下地島北西方沖合のさんご礁帯外縁において、礁湖内から外海に乗り出そうとして沖合を見たとき、西方からの波浪により同外縁に沿って白波が立っているのを認めた場合、同外縁近くでは磯波が突然高起することがあるので、波の状況をよく確かめ、外海に乗り出すのを止めるなどの磯波の危険性に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、この程度の波高なら大丈夫と思い、磯波の危険性に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、磯波が発生している外海に乗り出し、突然高起した同波を船首から受けて船尾側に大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、船外機に濡損を生じさせたほか燃料タンク等を流出させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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