(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年3月14日07時10分
伊万里湾青島水道黒島
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船白鴎丸 |
総トン数 |
17トン |
全長 |
21.5メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船馬力数 |
190 |
3 事実の経過
白鴎丸は、中型まき網漁業に従事するFRP製灯船で、A受審人が1人で乗り組み、操業のため、船首0.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成13年3月13日13時00分長崎県星鹿漁港を発し、同日16時ころ壱岐島南東方3海里ばかりの漁場に至って操業を開始し、翌14日06時ころ操業を切り上げて帰途に就いた。
06時34分A受審人は、肥前馬渡島灯台から115度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点で針路を203度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの風潮流によって2度ばかり右方に圧流されながら11.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、徐々に右偏して黒島に向首する態勢で続航していたところ、操業を終え錨を揚収したとき錨索の一箇所が摩耗して切れそうになっていたのを思い出し、付近に他船はおらず、黒島瀬戸までは15分ばかりかかるのでそれまでには十分終わるものと思い、これの補修を行うこととし、06時54分ころ操舵室の左舷側甲板上で錨索摩耗部の切り継ぎ作業を始めた。
A受審人は、錨索が濡れていて切り継ぎ作業に思いのほか時間がかかっていたが、作業を中断して船位を確認することなく、他船の有無を1、2度確認しただけで、黒島瀬戸までまだ距離があるものと思い、同作業を続行していたので、07時07分黒島の東岸から1,000メートルばかりの地点に至ったことに気付かず、同時10分少し前ふと左舷方を見たとき黒島の海岸線を認め、急いで操舵室に入って手動操舵に切り替えたとき、07時10分貝瀬灯台から249度0.8海里の黒島東岸の浅瀬に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、推進器翼、推進軸、舵板、航海計器が損傷したが、僚船に引き降ろされ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、壱岐水道の漁場から帰航中、船位の確認が不十分で、黒島に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人が、壱岐水道の漁場から帰航中、錨索の切り継ぎ作業を行う場合、沿岸を航行していたのであるから、随時船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、錨索の切り継ぎ作業を続け、船位を確認しなかった職務上の過失により、黒島の東岸浅瀬への乗揚を招き、推進器翼、推進軸などを損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。