（事実）
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年8月3日10時20分
沖縄県金武中城港
2 船舶の要目
| 船種船名 |
貨物船第八栄吉 |
| 総トン数 |
1,451トン |
| 全長 |
90.80メートル |
| 機関の種類 |
ディーゼル機関 |
| 出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第八栄吉は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A、B両受審人ほか4人が乗り組み、海砂採取の目的で、船首2.15メートル船尾3.40メートルの喫水をもって、平成13年8月3日09時30分沖縄県金武中城港の与那原湾与那原地先の物揚場を発し、同県伊是名島西方沖に向かった。
09時48分A受審人は、知名埼灯台から289度（真方位、以下同じ。）2.2海里の地点で、針路を085度に定め、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
A受審人は、天候が悪化する旨の気象情報を得たことから、金武中城港の中城湾新港で待機することとし、昇橋していたB受審人に、そのことを告げ、09時55分船橋当直を引き継いで降橋した。
ところで、与那原湾から中城湾新港に向けて北上する際、平曽根西方は水深が浅くて航行できないので、平曽根南方1.0海里の浅礁を替わした後、平曽根と津堅島間を航行する必要があった。一方、A受審人は、平成8年10月の第八栄吉新造時からB受審人とともに乗船しており、B受審人に中城湾新港防波堤付近までの船橋当直を委せていた。また、B受審人は、中城湾新港には数知れないほど入航した経験があったことから、金武中城港の水路状況は承知していた。
09時58分B受審人は、知名埼灯台から003度1,670メートルの地点で、平曽根と津堅島間に向けることとしたが、このとき、左舷船首42度方に視認していた灯台は平曽根灯台であったものの、これを津堅島灯台と誤認し、津堅島灯台を右舷側に見るつもりで左転したところ、平曽根灯台を右舷側に見る036度の針路となった。
その後、B受審人は、平曽根と津堅島間に向いているものと思い、周囲の地形を確かめるなり、作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行わなかったので、平曽根灯台を津堅島灯台と誤認していることも、平曽根西方の浅所に向首していることにも気付かないまま続航した。
10時15分半B受審人は、平曽根灯台から244度1.3海里の地点に達したとき、左舷前方に浅礁を認めて不審に思い、操舵を手動に切り替えて右舵20度をとって回頭し、同時19分少し前190度の針路として進行中、同時20分わずか前船首至近に浅礁を認めたが、どうすることもできず、第八栄吉は、同じ針路、速力のまま、10時20分平曽根灯台から215度1.0海里の地点において、乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力4の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底全般に多数の凹損を生じ、救助船により引き降ろされた。
（原因）
本件乗揚は、金武中城港において、与那原湾から中城湾新港に向けて北上する際、船位の確認が不十分で、浅所に向首進行したことによって発生したものである。
（受審人の所為）
B受審人は、金武中城港において、与那原湾から中城湾新港に向けて北上する場合、平曽根西方は水深が浅くて航行できないことを知っていたのであるから、平曽根と津堅島間に向いていることを確認できるよう、周囲の地形を確かめるなり、作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、平曽根と津堅島間に向いているものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、平曽根灯台を津堅島灯台と誤認していることも、平曽根西方の浅所に向首していることにも気付かないまま進行して乗揚を招き、船底全般に多数の凹損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。
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