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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第34号
件名

貨物船天神丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年6月25日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:天神丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
指定海難関係人
B 職名:天神丸機関長

損害
バルバスバウに亀裂を伴う凹損、船首船底に擦過傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月11日00時10分
 香川県 直島南東岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船天神丸
総トン数 197トン
全長 51.74メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 天神丸は、瀬戸内海各港と和歌山県御坊港との間を、専ら木材輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、船首1.0メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成13年8月10日17時30分御坊港を発し、広島県尾道糸崎港に向かった。
 ところで、A受審人は、船橋当直体制を同人、甲板員及び機関長のB指定海難関係人の3人による単独3時間交替の輪番制に定め、また同指定海難関係人が単独の当直を5年ほど行っていた。
 A受審人は、出航操船に引き続いて30分ほど船橋当直に当たり、18時ごろ昇橋してきた甲板員に当直を引き継ぐに際し、日頃B指定海難関係人に当直を行わせて支障がなかったので、強いて同人に当直に関する指導を行わなくても大丈夫と思い、同人が当直中に眠気を催した際には立って外気にあたるよう指示するなどの居眠り運航防止上の適切な指示をすることなく、そのことを甲板員から同指定海難関係人に申し継ぐよう告げないまま降橋して休息した。
 21時15分B指定海難関係人は、徳島県島田島の北西方約1,000メートルのところで、昇橋して前直の甲板員から当直を引き継いで単独で操船にあたり、操舵スタンド前に置かれた背当て肘付きで移動式の椅子に腰掛け、前路の見張りを行いながら西行し、23時31分少し過ぎカナワ岩灯標から040度(真方位、以下同じ)1.1海里の地点に達したとき、針路を備讃瀬戸東航路中央第4号灯浮標(以下「中央第4号灯浮標」という。)北側50メートルに向く278度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの潮流に乗じて11.0ノットの対地速力で、椅子に腰掛けて自動操舵により進行した。
 ところが、23時54分半B指定海難関係人は、男木島灯台から353度1,250メートルの、中央第4号灯浮標北側の地点で、針路を270度に転じ、潮流により左に1度圧流されながら続航中、海上も穏やかで視界も良く、周囲に気になる他船もいなかったことから安心して緊張感も緩んで眠気を催してきたが、努めて立って外気にあたるなど居眠り運航の防止措置をとることなく椅子に腰掛けたまま当直を続け、間もなく居眠りに陥った。
 こうして、B指定海難関係人は、その後予定針路の242度に転ずる中央第4号灯浮標の北側に達したことに気付かず、香川県直島の南東岸に向首したまま進行し、天神丸は、翌11日00時10分男木島灯台から282度3.0海里の直島南東岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近海域には1.7ノットの西南西流があった。
 A受審人は、自室で休息中、乗揚の衝撃を感じ、昇橋して事後の措置にあたった。
 乗揚の結果、バルバスバウに亀裂を伴う凹損及び船首船底に擦過傷を生じ、その後満潮期を待ってサルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、備讃瀬戸東航路を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、香川県直島南東岸に向首進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が無資格の船橋当直者に対し、居眠り運航防止上の適切な指示を与えなかったことと、船橋当直者が、眠気を催した際に居眠り運航防止措置をとらなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、備讃瀬戸東航路を西行中、無資格者に船橋当直を行わせる場合、居眠り運航とならないよう、居眠り運航防止上の適切な指示を与えるべき注意義務があった。しかるに、同人は、日頃B指定海難関係人に当直を行わせても支障がなかったので、強いて同人に当直に関する指導を行わなくても大丈夫と思い、眠気を催した際には立って外気にあたるよう指示するなどの居眠り運航防止上の適切な指示を与えなかった職務上の過失により、無資格の当直者が眠気を催した際、居眠り防止措置がとられず、同人が居眠りに陥ったまま続航して直島南東岸への乗揚を招き、バルバスバウに亀裂を伴う凹損及び船首船底に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 B指定海難関係人は、夜間、単独の船橋当直につき、備讃瀬戸東航路を西行中、眠気を催した際、立って外気にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかったことは本件発生の原因となる。





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