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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第22号
件名

プレジャーボート藍丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年6月27日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:藍丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
舵板、推進器翼などに曲損

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月5日07時40分
 北海道野寒布(のしゃっぷ)岬東岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート藍丸
全長 9.65メートル
登録長 7.69メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 128キロワット

3 事実の経過
 藍丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者2人を乗せ、日本一周の目的で、船首0.25メートル船尾1.13メートルの喫水をもって、平成13年5月14日05時00分兵庫県尼崎西宮芦屋港を発し、本州東岸沿いを北上した。
 その後A受審人は、津軽海峡を経由し、越えて6月5日07時00分ごろ北海道利尻島東方沖合に至り、宗谷海峡に向け、野寒布岬西方沖合を北上中、南西風が強まり北海道稚内港に寄港することとした。
 07時23分A受審人は、稚内灯台から275度(真方位、以下同じ。)1.7海里の地点において、針路を野寒布岬北方沖合に向く059度に定め、10.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 07時33分わずか過ぎA受審人は、稚内灯台から349度1.0海里の地点に達したとき、稚内港に向けて針路を転じることにしたが、野寒布岬沿岸には浅所が拡延していて、安全な離岸距離が海里単位であることを承知していたものの、沖合に出すと風波の影響を受けるので少々沿岸に寄せても大丈夫と思い、浅所海域に近づかないよう、GPSプロッター表示を見るなりして、少なくとも稚内港北副防波堤東灯台に向けるなど、針路を適切に選定することなく、右方の陸岸を見ながら針路を150度に転じて南下した。
 こうして、A受審人が、野寒布岬東岸の浅所海域に向首する状況となっていることに気付かずに続航中、藍丸は、07時40分稚内灯台から072度600メートルの地点の浅所に、原針路原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で視界は良好であった。
 乗揚の結果、舵板、推進器翼などに曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、北海道野寒布岬西方沖合を北上中、同岬北方沖合に差し掛かり、北海道稚内港に向けて転針する際、針路の選定が不適切で、同岬東岸の浅所海域に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、北海道野寒布岬北方沖合において、北海道稚内港に向けて針路を転じる場合、野寒布岬沿岸には浅所海域が拡延しており、安全な離岸距離が海里単位となることを承知していたのであるから、同岬東岸の浅所海域に近づかないよう、GPSプロッター表示を見るなりして、少なくとも稚内港北副防波堤東灯台に向けるなど、針路を適切に選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、沖合に出すと風波の影響を受けるので少々沿岸に寄せても大丈夫と思い、針路を適切に選定しなかった職務上の過失により、同岬東岸の浅所海域に向首進行して乗揚を招き、舵板、推進器翼などに曲損を生じさせるに至った。





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