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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年門審第8号
件名

貨物船第二十五対州丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年5月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(上野延之、橋本 學、島 友二郎)

理事官
畑中美秀

受審人
A 職名:第二十五対州丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
右舷ビルジキールに曲損及び右舷船底外板に擦過傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年2月20日06時00分
 福岡県志賀島北西岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二十五対州丸
総トン数 188トン
全長 50.47メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 433キロワット

3 事実の経過
 第二十五対州丸(以下「対州丸」という。)は、専ら長崎県の比田勝及び厳原両港と福岡県博多港間の定期輸送に従事する貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、雑貨及び空コンテナ約10トンを積み、船首1.05メートル船尾2.20メートルの喫水をもって、平成13年2月19日23時45分厳原港を発し、博多港に向かった。
 ところで、A受審人は、2日前に風邪をひいて高熱を発し、厳原港停泊中に長時間の休息をとったものの、熟睡できなかったこと及び体力が消耗していたことから居眠りに陥り易い体調であった。
 翌20日02時00分A受審人は、長崎県壱岐島北西方8.5海里の沖合で、前直者と交替して単独で船橋当直に就き、05時24分玄界島灯台から309度(真方位、以下同じ。)3.4海里の地点で、針路を116度に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 定針したとき、A受審人は、いすに腰を掛けて見張りに当たっていたところ、眠気を催したが、あと少しで入港するから我慢できるものと思い、居眠り運航の防止措置として、休息中の乗組員を昇橋させて2人当直にすることなく、依然としていすに腰を掛けながら見張りに当たって続航し、いつしか居眠りに陥った。
 05時44分A受審人は、博多港に向ける転針点の玄界島灯台から029度1,400メートルの地点に達したが、居眠りに陥っていたのでこのことに気付かず、転針することができないまま志賀島北西岸に向首して進行中、06時00分玄界島灯台から100度2.8海里の地点において、対州丸は、原針路、原速力のまま志賀島北西岸に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、衝撃で目覚めて乗り揚げたことを知り、機関を全速力後進にかけたが自力離礁できず、引船2隻の支援を受け、引き下ろされて博多港に引き付けられた。
 乗揚の結果、右舷ビルジキールに曲損及び右舷船底外板に擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、博多港北西方沖合を同港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、志賀島北西岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に当たって博多港北西方沖合を同港に向けて航行中、眠気を催した場合、居眠り運航の防止措置として、休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、あと少しで入港するから我慢できるものと思い、2人当直としなかった職務上の過失により、居眠り運航に陥り、志賀島北西岸に向首進行して乗揚を招き、対州丸の右舷ビルジキールに曲損及び右舷船底外板に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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