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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第4号
件名

プレジャーボート庄栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年5月30日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:庄栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
推進器翼を折損し同軸部から浸水、転覆し、のち廃船

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月28日20時30分
 福井県小浜湾北部

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート庄栄丸
登録長 8.82メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 102キロワット

3 事実の経過
 庄栄丸は、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、たい釣りの目的で、船首0.4メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成13年7月28日08時30分福井県和田港を発し、同県小浜湾北方3海里付近に至って釣りを行い、20時00分赤礁埼(あかぐりさき)灯台から016度(真方位、以下同じ。)3.3海里の地点を発進して帰途に就いた。
 A受審人は、発進と同時に針路を190度に定め、夜間なので機関を全速力前進の回転数より少し落とし、7.1ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 ところで、小浜湾湾口は、東西幅約2,000メートルで同湾北部に所在し、同湾口南西端部に赤礁埼灯台が位置し、赤礁埼の北岸から北方80メートルに、高さが0.4メートルとなる干出岩である赤礁があり、赤礁の北方付近は浅所の存在する危険海域であった。
 A受審人は、赤礁の存在を知っていたので、釣り場からの帰途に当たり小浜湾を南下するとき、赤礁からの離岸距離が十分となるよう、同湾口のほぼ中央部を通過する通常の針路模様で航行していた。
 A受審人が定針したころ、小浜湾湾口の中央部海域は、東西幅約1,000メートル南北幅約2,300メートルにわたり、いか釣り漁船約10隻の一団が操業中であった。
 20時11分少し前A受審人は、赤礁埼灯台から019度2.0海里の地点に達したとき、前路にいか釣り漁船一団の明るい灯火等を認め、このまま通常の針路模様で南下できないことを知り、針路を転じたが、右転模様で南下しても大丈夫と思い、赤礁の危険海域から離れる左転模様の針路となるよう、針路を適切に選定することなく、約20度の右転を行い、その後同一団海域の外側を緩やかに蛇行する針路模様で南下した。
 こうしてA受審人は、いか釣り漁船一団の西方縁から離れ、20時23分半赤礁埼灯台から000度1,600メートルの地点に達したとき、通常より赤礁埼に接航しているにもかかわらず、赤礁埼灯台の灯光を正船首少し右に見て針路を178度に転じ、赤礁北方の危険海域に向首していることに気付かず、原針路原速力のまま続航中、20時30分赤礁埼灯台から013度140メートルの浅所に、船尾の推進器が乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、推進器を折損し同軸部から浸水して転覆し、のち廃船となった。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、釣り場からの帰途に当たり、福井県小浜湾湾口に向け南下する際、針路の選定が不適切で、赤礁埼北方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、釣り場からの帰途に当たり、福井県小浜湾湾口の北方海域に至り、前路にいか釣り漁船一団の明るい灯火等を認め、このまま通常の針路模様で南下できないことを知り、針路を転じる場合、赤礁の危険海域から離れる左転模様の針路となるよう、針路を適切に選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、右転模様で南下しても大丈夫と思い、針路を適切に選定しなかった職務上の過失により、赤磯埼北方の浅所に向首進行して同浅所への乗揚を招き、推進器を折損し同軸部から浸水して転覆し、のち廃船となる事態を生じさせるに至った。





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