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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年長審第4号
件名

旅客船ニューしんせいあづま乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年4月10日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:ニューしんせいあづま甲板員 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
舵柱、推進翼及び推進軸を曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月23日20時00分
 八代海

2 船舶の要目
船種船名 旅客船ニューしんせいあづま
総トン数 6.6トン
登録長 12.42メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 426キロワット

3 事実の経過
 ニューしんせいあづまは、鹿児島県東町宮之浦港、伊唐北漁港及び幣串漁港との間を1日1往復しているFRP製定期旅客船であるが、平成13年3月23日定期便の運航を終えたのち、以前から少量の油漏れがしていた舵機の油圧シリンダーを修理することとなり、同日19時30分定期便で使用している桟橋の東方350メートルばかりの幣串漁港岸壁において修理を行い、A受審人と船長Yが乗り組み、船首0.2メートル船尾1.1メートルの喫水をもって、同時54分同港を発し、伊唐北漁港への帰途に就いた。
 A受審人は、現在は息子のBがニューしんせいあづまの船長に就いているが、それまでは有限会社Y汽船の社長を兼ねて同船の船長に就いており、幣串漁港から宮之浦港に至る水域については熟知しており、そして、定期便で同港から伊唐北漁港に向かうときは、幣串港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)の北西方230メートルばかりの幣串漁港北岸の桟橋を50メートルばかり離したところで、目吹瀬戸瓢箪島灯標(以下「瓢箪島灯標」という。)に向く針路としていた。
 A受審人は、出航後B船長が舵機室に入って油圧シリンダーの油漏れの有無をチェックすることから、自らが操船に当たり、機関を5.5ノットの微速力前進にかけ、手動操舵で西行し、19時56分南防波堤灯台から235度(真方位、以下同じ。)250メートルの地点に達したとき、いつもの定針地点とは異なっていたが、船位の確認を行うことなく、これまでの慣れから、瓢箪島灯標に向く針路とした。
 A受審人は、針路を瓢箪島灯標に向く214度としたとき、前島の北端に向首する態勢であったが、レーダーは始動せず、周囲の島嶼や前方の状況を確認しなかったので、このことに気付かないまま続航し、20時00分少し前前島北端をどうにか替わし、20時00分伊唐北漁港に向く194度に転じ、機関を航海全速力前進に上げたとき、南防波堤灯台から218度910メートルの前島北西岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、舵柱、推進翼及び推進軸を曲損した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、八代海の獅子島幣串漁港から伊唐北漁港に向け帰航中、船位の確認が不十分で、前島北西岸に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、定期便の寄港地である幣串漁港を出航する場合、いつもの着岸場所と違っていたのであるから、安全な針路が選定できるよう、船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、これまでの慣行のまま運航し、船位を確認しなかった職務上の過失により、安全な針路が選定できず、前島北西岸に向け進行して乗揚を招き、舵柱、推進器などを損傷させるに至った。





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