日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年長審第21号
件名

漁船浜正丸プレジャーボートふじ丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年6月20日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:浜正丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ふじ丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
浜正丸・・・推進器翼を曲損
ふじ丸・・・左舷後部及び機関室囲壁を破損、水船、のち廃船

原因
浜正丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ふじ丸・・・船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、浜正丸が、見張り不十分で、漂泊中のふじ丸を避けなかったことによって発生したが、ふじ丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月28日11時50分
 九州西岸九十九島湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船浜正丸 プレジャーボートふじ丸
総トン数 4.6トン  
登録長 11.86メートル  5.8メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70  
出力   17キロワット

3 事実の経過
 浜正丸は、後部に操舵室を備えたFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.30メートル船尾1.15メートルの喫水をもって、平成13年5月26日04時00分長崎県新魚目町赤岳地区の船だまりを発し、五島列島北西方の漁場ではえ縄漁を行ったのち、翌27日夕刻同県相浦港に至り、翌々28日漁獲物の水揚げ等を終え、11時33分同港を発航して帰途に就いた。
 ところで、浜正丸は、半速力前進を越えて航行すると船首部が水平線から浮上し、各舷約15度の死角が生じる状況にあった。
 A受審人は、相浦港を微速力前進で出航し、港外付近から徐々に増速しながら前方をいちべつしたとき、他船を認めなかったことから、船首を左右に振るなど死角を補う見張りを行うことなく西行した。
 11時46分少し過ぎA受審人は、肥前大平瀬灯標から085度(真方位、以下同じ。)1,540メートルの地点において、針路を242度に定めて自動操舵とし、機関を航海速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、定針したときほぼ正船首1,500メートルのところにふじ丸が漂泊していたが、操舵室右舷側のいすに腰をかけて前方の見張りを行っていたものの、依然として死角を補う見張りを行わず、たまたま入航中の運搬船と近距離で左舷を対する態勢であったことから、同船に気をとられていたこともあって、ふじ丸に気付かず、同船を避けることなく続航し、11時50分肥前大平瀬灯標から161度620メートルの地点において、浜正丸の船首がふじ丸の左舷後部に直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南南東風が吹き、潮候は高潮時であった。
 また、ふじ丸は、後部に機関室の囲壁を有するFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、遊漁の目的で、船首0.40メートル船尾0.95メートルの喫水をもって、同日09時50分佐世保市梶ノ浦船だまりを発し、高島付近の釣場に向かった。
 10時10分B受審人は、高島東方1海里ばかりの地点に至って機関を停止してパラシュート型シーアンカーを船首から投入し、左舷側甲板に後部に向かって腰を降ろし、船尾から左舷方45度ばかり向く姿勢で竿釣りを始め、その後南南東の微風に立って152度に向首して遊漁を続けていたところ、11時46分少し過ぎ左舷正横1,500メートルのところに浜正丸が自船に向首し、その後避航することなく接近していたが、十分な見張りを行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 11時49分少し過ぎB受審人は、左舷方300メートルばかりに自船に向首接近する浜正丸を初めて視認したが、同船がそのうち避けてくれるものと思い、速やかに機関を始動して衝突を避けるための措置をとることなく浜正丸を見ていたところ、同船が100メートルばかりに接近したとき、危険を感じて機関室囲壁の上に立ち、大きな声を出しながら手を振ったが、効なく、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ふじ丸に乗り上がった浜正丸は、推進器翼を曲損し、のち修理され、ふじ丸は、左舷後部及び機関室囲壁を破損して水船となり、のち廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、長崎県相浦港外において、浜正丸が、見張り不十分で、前路で漂泊して遊漁中のふじ丸を避けなかったことによって発生したが、ふじ丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、死角のある浜正丸で長崎県相浦港を出航する場合、船首を振るなどして死角を補い、十分な見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路に他船はいないものと思い、死角を補うことなく、入航船に気をとられるなどして十分な見張りを行わなかった職務上の過失により、ふじ丸を避けることなく進行して衝突を招き、浜正丸の推進器翼を曲損させ、ふじ丸の左舷後部などの破損により同船を廃船させるに至った。
 B受審人は、相浦港外において、漂泊して遊漁中、自船に向首接近する浜正丸を近くに認めた場合、速やかに衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、浜正丸が避けるものと思い速やかに衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:18KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION