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平成14年那審第15号
件名

プレジャーボートサミット ジュニアプレジャーボートデルフィーノ衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年6月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:サミットジュニア船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
サ 号・・・右舷船尾部外板に亀裂
デ 号・・・左舷中央部外板に破口

原因
サ 号・・・主機遠隔操縦レバーの操作位置確認不十分

裁決主文

 本件衝突は、サミット ジュニアが、主機遠隔操縦レバーの操作位置の確認が不十分で、機関が後進のまま増速され、後方に係留中のデルフィーノに向かって進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月17日13時30分
 沖縄県那覇港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート サミットジュニア プレジャーボートデルフィーノ
総トン数   12トン
登録長 7.90メートル 13.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 147キロワット 507キロワット

3 事実の経過
 サミット ジュニア(以下「サ号」という。)は、船体前部右舷側に操縦席を設け、その前方の舵輪右横には、右舷側に前後進用のクラッチレバーを、5センチメートル隔ててその左舷側には増減速用のスロットルレバーを有する主機遠隔操縦装置を備えたFRP製プレジャーボートで、専ら釣りなどのレジャー用に使用されていた。そして、那覇港浦添北内防波堤灯台南南東方約480メートルの、同港北部にある船だまり北側の防波堤(以下「北防波堤」という。)基部に船首を270度(真方位、以下同じ。)に向けて右舷付け係留中のところ、A受審人が1人で乗り組み、同係留地の南方約50メートルの船揚場に陸揚げする目的で、船首0.3メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成13年7月17日13時28分同係留地を発し、船揚場に向かった。
 ところで、那覇港北部の船だまりは、陸岸から東方へ約150メートル延びてその突端に赤色簡易標識灯(以下「標識灯」という。)が設けられた北防波堤、その標識灯の南方約60メートルの地点から南東方へ陸岸まで約140メートル延びる防波堤とによって囲まれ、出入口が東方に向いて開き、その内側の陸岸から北北東方へ約50メートル延びる突堤によって南北二つに分かれ、南側の泊地は小型漁船やプレジャーボート用の、北側の泊地は主にプレジャーボート用の係留地として使用されていた。そして、サ号が係留していた北側の泊地は広さが東西方向約130メートル南北方向約120メートルで、北防波堤基部から南方へ長さ約10メートルの岸壁があり、そこから南方へ約100メートルにわたって船揚場が設けられ、当時サ号の左舷側約2メートルのところに同型船が船首付け係留し、また、サ号の船尾方50メートル離れたところには、デルフィーノ(以下「デ号」という。)が同防波堤と直角に船首を000度に向けて船首付け係留していた。
 離岸後、A受審人は、後退してデ号の手前のところでいったん行きあしを止めて右転し、再び後退を続けてデ号の左舷側を替わしたあと前進して船揚場に向かう予定で、操縦席のところで立って左手で舵輪を握り、右手で主機遠隔操縦レバーの、長さ15センチメートルのクラッチレバーと同長さのスロットルレバーを適宜操作し、左後方を向いてデ号の方を見ながら0.7ノットの平均速力で、ゆっくりと後退した。
 13時30分わずか前A受審人は、船首が標識灯から263度110メートルの地点に達したとき、船首が285度を向いた状態で船尾がデ号の左舷側まで約10メートルに接近したとき、右舵一杯にとり、短時間機関を微速力前進にかけて後進行きあしを止めることとしたが、デ号の方を見ることに気をとられ、主機遠隔操縦レバーの操作位置を十分に確認しなかったので、クラッチレバーを前進側に倒したつもりがスロットルレバーを前方に一杯まで倒したため、機関が全速力後進にかかり、後進が増速されてデ号に向かって急接近し、同船船長の叫び声を聞いたが、気が動転していてクラッチレバーを前進側に倒さないでいるうち、13時30分標識灯から256度93メートルの地点において、サ号は、船首が305度を向いて約3.9ノットの後進速力で、その右舷船尾がデ号の左舷中央部に前方から55度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
 また、デ号は、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、船長Tが1人で乗り組み、船首0.5メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、北防波堤基部の東方60メートルのところで、同防波堤上に船首から係留索を3本とり、船尾両舷からは錨を投入して船首付け係留中、T船長は、サ号が後進のまま自船に急接近してきたので、大声で叫んだが効なく、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、サ号は右舷船尾部外板に亀裂(きれつ)を生じ、デ号は左舷中央部外板に破口を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、沖縄県那覇港北部の船だまりにおいて、サ号が、船揚場に向かうため離岸中、後進行きあしを止めるために機関を前進にかけようとする際、主機遠隔操縦レバーの操作位置の確認が不十分で、機関が後進のまま増速され、後方に係留中のデ号に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県那覇港北部の船だまりにおいて、船揚場に向かうため離岸中、後進行きあしを止めるために機関を前進にかけようとする場合、船尾方近距離の北防波堤にはデ号が船首付け係留していたのであるから、同船に著しく接近することのないよう、主機遠隔操縦レバーの操作位置を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、左後方を向いてデ号の方を見ることに気をとられ、主機遠隔操縦レバーの操作位置を十分に確認しなかった職務上の過失により、クラッチレバーを前進側に倒したつもりがスロットルレバーを前方に一杯まで倒したため、機関が後進のまま増速され、デ号に向かって進行して衝突を招き、サ号の右舷船尾部外板に亀裂を、デ号の左舷中央部外板に破口をそれぞれ生じさせるに至った。


参考図
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