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平成14年広審第27号
件名

漁船勝丸遊漁船裕進丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年6月28日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(竹内伸二、西田克史、佐野映一)

理事官
平野浩三

受審人
A 職名:勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:裕進丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
勝丸・・・右舷側外板、船室及び揚網機に損傷
裕進丸・・・船首部材に損傷及び船首船底に亀裂

原因
裕進丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
勝丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、裕進丸が、見張り不十分で、漂泊中の勝丸を避けなかったことによって発生したが、勝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月28日06時54分
 香川県志度湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船勝丸 遊漁船裕進丸
総トン数 4.9トン 2.62トン
全長   9.95メートル
登録長 12.36メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力   169キロワット
漁船法馬力数 15  

3 事実の経過
 勝丸は、小型底引き網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、えびこぎ網漁の目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年11月28日03時00分香川県竹居漁港を発し、大串埼沖合の漁場に至り、操業を開始した。
 06時15分A受審人は、志度湾において、第2回目のえい網を終え、揚網ののち、漁獲物の選別作業を行うため、機関を中立運転として漂泊を始めた。
 A受審人は、左舷船尾甲板において、船首に背を向けて選別作業を始めた当初、時々周囲を見回したが、これまで朝方は船の往来が少なく、当時も近くに他船がいなかったので、やがて選別作業に没頭するようになった。
 06時53分A受審人は、大串埼沖灯標から297度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点で、船首が161度を向いて漂泊していたとき、右舷船尾45度500メートルのところに裕進丸を視認することができ、その後自船に向首して衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが、選別作業に気を奪われ、周囲の見張りを行わなかったので、これに気付かず、警告信号を行うことも、機関を使用して移動するなどの衝突を避けるための措置もとらなかった。
 06時54分わずか前、A受審人は、波切り音が聞こえたので、顔を上げて周囲を見回したところ、裕進丸を至近に認めたが、どうすることもできず、06時54分前示漂泊地点において、裕進丸の船首が、161度に向首した勝丸の右舷後部に、後方から45度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、日出時刻は06時49分、日出方位角は116度であった。
 また、裕進丸は、FRP製遊漁船で、B受審人が1人で乗り組み、釣り客2人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同日06時15分香川県高松港を発し、大串埼沖合の釣り場に向かった。
 06時49分B受審人は、大串埼沖灯標から299度3.3海里の地点に達したとき、水平線上に現れた太陽を正船首少し左に見るよう、針路を125度に定め、機関を回転数毎分2,100の前進にかけ、16.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 06時52分B受審人は、大串埼沖灯標から298度2.5海里の地点に達したとき、折から昇った太陽と海面反射で船首方向が眩しい状況であったが、左右をいちべつしただけで、前路に他船はいないと思い、サングラスを使用するなどして前路の見張りを十分に行わなかったので、左舷船首5度1,000メートルのところに、南東方に向首して漂泊している勝丸の存在に気付かないまま続航した。
 06時53分B受審人は、大串埼沖灯標から297度2.3海里の地点に達したとき、大串埼沖合の釣り場に向け針路を116度に転じたところ、正船首500メートルのところに勝丸が漂泊しており、その後同船に衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、依然サングラスを使用して前路の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、勝丸を避けることなく進行中、裕進丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、勝丸は、右舷側外板、船室及び揚網機に損傷を生じ、裕進丸は、船首部材に損傷及び船首船底に亀裂を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、香川県志度湾において、海面が日出直後の太陽で眩しい状況下、裕進丸が、大串埼沖合の釣り場に向け航行中、見張り不十分で、漂泊中の勝丸を避けなかったことによって発生したが、勝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、志度湾において、大串埼沖合の釣り場に向け航行する場合、海面が日出直後の太陽で眩しい状況であったから、漂泊中の勝丸を見落とすことのないよう、サングラスを使用するなどして前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左右をいちべつしただけで前路に他船はいないものと思い、サングラスを使用するなどして前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漂泊している勝丸に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、裕進丸の船首部材に損傷及び船首船底に亀裂を、勝丸の右舷外板、船室及び揚網機に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人は、志度湾において、漂泊して漁獲物の選別作業を行う場合、自船に向けて接近する裕進丸を見落とすことがないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、選別作業に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する裕進丸に気付かず、警告信号を行うことも、機関を使って移動するなどの衝突を避けるための措置をとることもなく漂泊を続け、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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