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平成14年神審第14号
件名

プレジャーボートエロスマサトプレジャーボートペガサス衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年6月28日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:エロスマサト船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:ペガサス船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
エ号・・・右舷船尾船底に擦過傷
ペ号・・・左舷船首部に破口、操縦士が骨盤骨折等、同乗者が左肋骨骨折等

原因
エ号・・・動静監視不十分、船員の常務(船間距離)不遵守(主因)
ペ号・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、両船が直列状況の同航態勢で航行するときの船間距離が不十分であったうえ、エロスマサトが、動静監視不十分で、先航中のペガサスを避けなかったことによって発生したが、ペガサスが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらずに停止したことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月12日12時30分
 兵庫県赤穂港北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートエロスマサト
登録長 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 89キロワット

船種船名 プレジャーボートペガサス
登録長 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 62キロワット

3 事実の経過
 エロスマサト(以下「エ号」という。)及びペガサス(以下「ペ号」という。)は、いずれもウォータージェット推進方式により、90キロメートル毎時(以下「キロ」という。)の速力性能を有する水上オートバイで、船首尾0.2メートルの等喫水のエ号に、A受審人が1人で乗り組み、喫水不詳のペ号には、B受審人が1人で乗り組み友人1人を乗せ、共に遊走の目的で、平成13年8月12日11時30分赤穂御埼灯台から317度(真方位、以下同じ。)2,200メートルの地点を発航した。
 A、B両受審人は、ペ号が先航する同航態勢で航行することにしたが、両船が直列状況のときの船間距離を十分にとることなく、千種川を南下した後、陸岸沿いに北上し、赤穂御埼灯台から056度2,650メートルにある壁岩(かべいわ)南端(以下「基点」という。)の北方海域に至って反転し、兵庫県家島諸島西島方面に向かった。
 A受審人は、12時29分半、基点から291度235メートルの地点において、ペ号を右舷船首10度10メートルに見る態勢をとり、針路を160度に定め、スロットルレバーを半開にして30キロの対地速力で進行中、同時30分わずか前、基点から225度193メートルの地点に達したとき、左舷側壁岩上の釣人の釣り模様に気を取られ、ペ号の停止模様がわかるよう、ペ号の動静監視を十分に行わなかったので、停止するなどしてペ号を避けず、ハンドルが右方に少し切れた状況となり、そのころ停止したペ号へ向首進行していることに気付かずに続航中、12時30分、基点から223度200メートルの地点において、原速力のまま右転中のエ号の船首が200度に向いたとき、ペ号の左舷船首部に、後方から40度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南西風が吹き、視界は良好であった。
 また、B受審人は、12時29分半、基点から289.5度234メートルの地点において、エ号を左舷船尾10度に見る態勢をとり、針路を160度に定め、スロットルレバーを半開にして30キロの対地速力で進行した。
 間もなく、B受審人は、反転した地点付近に引き返そうとして、一時停止することにしたが、まさかエ号と衝突することはないと思い、エ号の接近模様がわかるよう、エ号の動静監視を十分に行うことなく、12時30分わずか前、エ号がペ号に向首進行する態勢となったことに気付かず、大幅に右転するなど、エ号との衝突を避けるための措置をとらず、ペ号がスロットルレバーを放して停止した直後、原針路のまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、エ号は右舷船尾船底に擦過傷を、ペ号は左舷船首部に破口と後部座席に損傷を生じたが、のちいずれも修理され、B受審人が骨盤骨折等を、同乗者が左肋骨骨折等を負った。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県赤穂港北東方沖合において、両船が直列状況の同航態勢で航行するときの船間距離が不十分であったうえ、エ号が、動静監視不十分で、先航中のペ号を避けなかったことによって発生したが、ペ号が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらずに停止したことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県赤穂港北東方沖合において、ペ号を先航させる態勢で航行する場合、ペ号の停止模様がわかるよう、ペ号の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷側壁岩上の釣人の釣り模様に気を取られ、ペ号の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、ペ号の停止模様に気付かず、停止するなどしてペ号を避けずに進行してペ号との衝突を招き、エ号の右舷船尾船底に擦過傷を、ペ号の左舷船首部に破口と後部座席に損傷を生じさせ、B受審人に骨盤骨折等を、同乗者に左肋骨骨折等を負わせるに至った。
 B受審人は、兵庫県赤穂港北東方沖合において、エ号に先航する態勢で航行中、一時停止する場合、エ号の接近模様がわかるよう、エ号の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさかエ号と衝突することはないと思い、エ号の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、エ号がペ号に向首進行する態勢となったことに気付かず、大幅に右転するなど、エ号との衝突を避けるための措置をとらず、スロットルレバーを放して停止してエ号との衝突を招き、前示の損傷と負傷とを生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:25KB)





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