(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年5月26日11時15分
宮城県閖上漁港沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
遊漁船第十一宝来丸 |
プレジャーボートイーグルIII |
総トン数 |
4.8トン |
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全長 |
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8.95メートル |
登録長 |
11.30メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
235キロワット |
169キロワット |
3 事実の経過
第十一宝来丸(以下「宝来丸」という。)は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客11人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成13年5月26日06時00分宮城県閖上漁港を出港し、同漁港沖合の釣り場に向かった。
A受審人は、閖上漁港の南東方15海里付近で3時間ばかり釣りをしたのち、陸岸寄りに移動することとし、10時54分閖上港導流堤灯台(以下「閖上港灯台」という。)から124度(真方位、以下同じ。)14.3海里の地点で、機関を12.5ノットの半速力前進にかけ、針路を315度に定めて進行した。
A受審人は、いすに腰掛けて手動操舵に当たり、穏やかな海上を航行していたことから気が緩み、いつしか眠気を感じるようになったが、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、外気にあたって眠気を払うなどの居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、11時ごろ居眠りに陥った。
11時08分A受審人は、閖上港灯台から120度11.3海里の地点に達したとき、正船首1.5海里のところにイーグルIII(以下「イーグル」という。)が存在し、その後同船が漂泊中であることを認め得る状況であったが、居眠りに陥っていて、そのことに気付かなかった。
A受審人は、イーグルを避けることなく続航し、11時15分わずか前ふと目が覚めて目前に迫っている同船を認め、急いで左舵を取ったが間に合わず、同時15分閖上港灯台から119度9.8海里の地点において、宝来丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首部がイーグルの右舷中央部に前方から35度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、海上は幾分もやがかかっており視程は1海里程度であった。
また、イーグルは、FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日07時00分同県塩釜港を出港し、閖上漁港沖合の釣り場に向かった。
B受審人は、時々場所を変えながら釣りをし、09時35分ごろ前示衝突地点付近に至り、機関を停止し、パラシュート型シーアンカーを船首から投じ、ほぼ東を向く状態で漂泊して釣りを再開した。
11時13分半B受審人は、100度を向いていた自船の右舷船首35度500メートルのところに、自船に向首している宝来丸を初めて視認した。
B受審人は、釣りをしながら宝来丸の動静監視を続け、同船が自船に向首したまま次第に接近して来るのを認めたが、自船の存在に気付いており、釣果を尋ねるために近寄って来るものと思い、ホーンによる警告信号を行わず、機関を使用して衝突を避けるための措置をとらなかったところ、11時15分少し前宝来丸との距離が100メートルばかりとなったとき、依然として同じ態勢で接近してくることに危険を感じ、ホーンを吹鳴しようと操舵席に駆け寄ったが、間に合わず、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、宝来丸は右舷船首部に擦過傷を生じ、イーグルは右舷中央部の外板、甲板及びガンネルに亀裂を伴う損傷を生じた。
(原因)
本件衝突は、宮城県閖上漁港南東方沖合において、航行中の宝来丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊していたイーグルを避けなかったことによって発生したが、イーグルが、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、宮城県閖上漁港南東方沖合において、単独で操船に当たり、釣り場を移動するために航行中、眠気を感じた場合、居眠りに陥らないよう、外気にあたって眠気を払うなどの居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠りに陥ることはないと思い、外気にあたって眠気を払うなどの居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、前路で漂泊していたイーグルを避けずに進行して衝突を招き、自船の右舷船首部に擦過傷を、また、イーグルの右舷中央部外板、甲板及びガンネルに亀裂を伴う損傷を生じさせるに至った。
B受審人は、宮城県閖上漁港南東方沖合において、漂泊して遊漁中、自船に向首したまま接近して来る宝来丸を認めたとき、ホーンにより警告信号を行い、機関を使用して位置を変えるなどの衝突を避けるための措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。しかしながら、宝来丸が釣果を訊くために接近して来るのか、自船の存在に気付いていないのかを判別するのは簡単でなく、至近距離になるまで衝突の危険を察知し難いことに徴し、職務上の過失とするまでもない。