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平成13年那審第46号
件名

漁船第三喜代丸漁船第八海真丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年5月21日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第三喜代丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第八海真丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
喜代丸・・・船首外板に擦過傷
海真丸・・・右舷中央部外板を大破、転覆し、のち廃船

原因
喜代丸・・・居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
海真丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第三喜代丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、漂泊中の第八海真丸を避けなかったことによって発生したが、第八海真丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月28日01時35分
 沖縄島南南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三喜代丸 漁船第八海真丸
総トン数 15.47トン 3.85トン
登録長 13.50メートル 9.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 478キロワット  
漁船法馬力数   60

3 事実の経過
 第三喜代丸(以下「喜代丸」という。)は、船体中央部からやや後方に操舵室を設けた、まぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、操業の目的で、船首1.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成13年5月15日11時30分沖縄県那覇港内の泊漁港を発し、沖縄島南方65海里ばかりの漁場に向かった。
 21時15分A受審人は、漁場に至り、漂泊して休息をとったのち、翌16日05時15分ごろから操業を開始して3時間ばかりかけて投縄を行い、13時半ごろまで待機してから揚縄にかかり、21時00分ごろ終了して3時間ばかり潮上りしたのち、漂泊して早朝まで休息した。その後1日につき5時間ばかり休息をとるだけでほぼ連日操業を繰り返し、まぐろ約1トンを獲たところで操業を終え、同月27日20時43分沖縄島南南西方沖合の北緯24度50分東経127度04分の地点を発進して帰途に就いた。
 発進したとき、A受審人は、針路を020度(真方位、以下同じ。)に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの速力で、航行中の動力船の灯火のほか操舵室上部のマスト頂部に紅色回転灯を点灯して進行した。そして、自らが往復航の船橋当直を行うこととしていたので、操舵室左舷側のいすに腰掛けて当直に当たっているうち、十分な休息時間がとれないまま漁場を発進してそのまま船橋当直に当たるなど疲労と睡眠不足とから、翌28日01時ごろから眠気を催すようになったが、休息中の甲板員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航の防止措置をとらないで当直を続けたところ、間もなく居眠りに陥った。
 01時31分A受審人は、正船首1,000メートルのところに、漂泊している第八海真丸(以下「海真丸」という。)が掲げる白灯と黄色回転灯及び白、紅点滅灯を視認でき、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、居眠りしていてこのことに気付かず、同船を避けないまま続航し、01時35分喜屋武埼灯台南南西方43海里の、北緯25度26.6分東経127度18.8分の地点において、喜代丸は、原針路、原速力のまま、その船首が海真丸の右舷中央部に直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、視界は良好であった。
 また、海真丸は、船体中央部からやや後方に操舵室を設けた、いか旗流し漁業等に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、同月26日11時40分沖縄県糸満漁港を発し、沖縄島南西方48海里ばかりの漁場に向かった。
 18時00分B受審人は、漁場に至り、漂泊して休息したのち、翌27日04時40分から操業を開始して17時00分当日の漁を終了し、20時00分前示衝突地点付近に移動して船首を東方に向け機関を停止し、航海灯を消灯し、前部マスト頂部に黄色回転灯、操舵室上部前方に白色全周灯及び同全周灯上方の左右両舷に白、紅点滅灯各1個をそれぞれ点灯して操業を開始する翌日早朝まで待機するつもりで漂泊を始めた。
 ところで、B受審人は、漂泊をしている水域が、一般船舶が通常航行する水域であったが、漂泊を始めたころ付近に他船を見かけなかったうえ、自船は白色全周灯や黄色回転灯等を点灯していて周囲からよく見えるから、大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行わないで、操舵室の床の上で横になって休息した。
 28日00時過ぎB受審人は、僚船が他の僚船に連絡していた「近くを船が通るので気を付けろ。」という漁業無線を傍受して目覚め、周囲を一瞥(いちべつ)しただけで他船が見当たらなかったので再び横になって休息した。そして、01時31分船首が110度を向いた状態で漂泊していたとき、右舷正横1,000メートルのところに、自船の方に向かってくる喜代丸の白、紅、緑3灯のほか紅色回転灯を視認でき、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、依然見張り不十分のまま、仮眠をとっていて、自船を避けずに接近する喜代丸に気付かず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続け、海真丸は、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、喜代丸は船首外板に擦過傷を生じたのみであったが、海真丸は右舷中央部外板を大破して転覆し、のち廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、夜間、沖縄島南南西方沖合において、漁場から帰航中の喜代丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊中の海真丸を避けなかったことによって発生したが、海真丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、沖縄島南南西方沖合を同島泊漁港に向けて北上中、眠気を催した場合、十分な休息時間がとれないまま漁場を発進してそのまま船橋当直に当たるなど疲労と睡眠不足の状態にあったから、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、いすに腰掛けたまま当直を続け、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、白色全周灯や黄色回転灯等を掲げて前路で漂泊中の海真丸を避けないまま進行して同船との衝突を招き、喜代丸の船首外板に擦過傷を生じさせ、海真丸の右舷中央部外板を大破して転覆させ、同船を廃船とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人が、1人で乗り組み、夜間、一般船舶が通常航行する沖縄島南南西方沖合において、操業を開始する早朝まで漂泊して待機する際、仮眠をとっていて周囲の見張りを十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。
しかしながら、以上のB受審人の所為は、周囲からよく見え、自船の存在が分かる白色全周灯、黄色回転灯及び白、紅点滅灯を表示していたことなどに徴し、職務上の過失とするまでもない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:19KB)





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