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平成13年広審第106号
件名

漁船亜矢丸漁船健丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年4月25日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎、伊東由人、中谷啓二)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:亜矢丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
亜矢丸・・・左舷水線下船首部に擦過傷
健 丸・・・右舷船尾部材を破損、船長が多発外傷により死亡

原因
健 丸・・・法定灯火不表示、船員の常務(避航動作)不遵守

主文

 本件衝突は、健丸が、無灯火で航行したばかりか、接近する亜矢丸を避けなかったことによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年10月5日05時30分
 愛媛県 新居浜港多喜浜区

2 船舶の要目
船種船名 漁船亜矢丸 漁船健丸
総トン数 1.7トン 0.67トン
全長 8.58メートル 5.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 110キロワット  
漁船法馬力数   15

3 事実の経過
 亜矢丸は、専ら新居浜港多喜浜区の海域で操業するレーダーを装備しないFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、太刀魚釣りの目的で、船首0.15メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、所定の灯火を点灯し、平成13年10月5日05時25分愛媛県新居浜市垣生南部漁港(長岩地区)の係船地を発し、多喜浜区の漁場に向かった。
 A受審人は、太鼓大橋を通過するまで低速力で航行し、同橋を通過後機関回転数を徐々に上げ、05時29分新居浜港多喜浜東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から186度(真方位、以下同じ。)820メートルの地点で、8.2ノットの対地速力(以下「速力」という。)になったとき、針路を防波堤入口に向く002度に定め、再び機関の回転数を徐々に上げながら手動操舵によって進行した。
 定針したころ、A受審人は、船首を左右に振って前方を見渡したとき、正船首方約220メートルのところに自船とほぼ同じ針路及び低速力で航行している健丸が存在し、その後同船に衝突のおそれのある態勢で接近したが、付近は夜明け前で暗く、同船が無灯火の状態だったので視認することができないまま進行中、05時30分東防波堤灯台から189度500メートルの地点において、亜矢丸は、原針路のまま、速力が14.0ノットになったとき、その船首が、健丸の右舷船尾部にほぼ平行に衝突し、これに乗り揚がった。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期で、日出時は06時05分であった。
 また、健丸は、主として延縄漁業に従事する船外機を装備した木製漁船で、船長Sが1人で乗り組み、太刀魚釣りの目的で、同日05時20分前示漁港の係船地を発し、多喜浜区の漁場に向かった。
 ところで、健丸には、法定の灯火設備がなく、S船長は、同設備の設置を垣生南部漁業協同組合及び同組合員から要請されていたが設置せず、時折夜間に出漁するときは、懐中電灯を携行することにしていたものの、当日は懐中電灯を自宅に置き忘れたまま出漁した。
 S船長は、無灯火の状態のまま発航し、右舷船尾に座り船外機を操作しながら約3.5ノットの速力で航行し、05時22分半太鼓大橋を通過後徐々に左転を始め、同時27分東防波堤灯台から186度820メートルの地点で、針路を002度に定めて進行した。
 05時29分S船長は、自船の正船尾方約220メートルに亜矢丸の白、紅、緑3灯を視認でき、その後同船が衝突のおそれのある態勢で接近していることを認められる状況になっていたが、同船を避けないまま続航中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、亜矢丸は、左舷水線下船首部に擦過傷を生じ、健丸は右舷船尾部材を破損して船外機が脱落し、S船長(大正12年11月10日生、四級小型船舶操縦士免状受有)は病院に搬入されたが多発外傷により死亡した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、新居浜港多喜浜地区において、健丸が、無灯火で航行したばかりか、接近する亜矢丸を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:34KB)





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