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平成14年神審第6号
件名

貨物船第八進栄丸漁船金比羅丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年4月15日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(前久保勝己)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第八進栄丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:金比羅丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
進栄丸・・・左舷中央部ハンドレールに曲損
金比羅丸・・・船首ホースビットに破損

原因
金比羅丸・・・居眠り運航防止措置不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
進栄丸・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、金比羅丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る第八進栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第八進栄丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月5日02時30分
 徳島県富岡港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八進栄丸 漁船金比羅丸
総トン数 166トン 8.5トン
全長 49.94メートル  
登録長   14.69メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 441キロワット  
漁船法馬力数   25

3 事実の経過
 第八進栄丸(以下「進栄丸」という。)は、船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、チップ190トンを載せ、船首2.2メートル船尾3.1メートルの喫水をもって、平成13年6月4日11時55分愛媛県松山港外の西垣生泊地を発し、徳島県富岡港に向かった。
 A受審人は、翌5日00時50分ごろ単独で船橋当直に就き、鳴門海峡を通過して紀伊水道を南下し、02時17分少し前中島港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から006度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点で、針路を175度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で、航行中の動力船の灯火を表示して進行した。
 02時25分わずか過ぎA受審人は、左舷船首15度1.5海里のところに金比羅丸の白、緑2灯を初めて視認するとともに、レーダーで同船の映像を探知し、その動静を監視するうち、同時27分少し前南防波堤灯台から017度1.5海里の地点に達したとき、金比羅丸が同方位1.0海里になり、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったものの、警告信号を行わず、やがて自船の進路を避けずに間近に接近したのを認めたが、いずれ金比羅丸が避けるものと思い、速やかに右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとることなく続航した。
 02時30分わずか前A受審人は、金比羅丸が至近に迫り、ようやく衝突の危険を感じ、手動操舵に切り換え、右舵一杯としたが及ばず、02時30分南防波堤灯台から027度1.1海里の地点において、進栄丸は、180度を向首したとき、原速力のまま、その左舷中央部に金比羅丸の船首が前方から33度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力1の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
 また、金比羅丸は、小型機船底びき網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、4日15時00分徳島県元根井漁港を発し、16時ごろ同県伊島北西方沖合3海里付近の漁場に至って操業を行い、車えびなど約30キログラムを獲て操業を終え、翌5日01時45分同漁場を発進し、水揚げのため、航行中の動力船の灯火を表示して帰途に就いた。
 ところで、B受審人は、平素から航程が1時間程度の漁場における操業に、隔日あるいは3日に2日の割合で従事しており、15時ごろ出港して操業を行ったのち、翌日03時ごろ帰港して水揚げを行い、その後は自宅で十分に睡眠をとるようにしていた。
 B受審人は、漁場発進後、乗組員に船尾甲板で網の修理を行わせ、単独で操船に当たって北上し、02時15分青島灯台から048度1.1海里の地点で、針路を327度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 定針後、B受審人は、操舵輪後方の台に腰掛けた姿勢で当直を続けているうち、海上平穏で周囲に気になる他船を認めないことから、やがて眠気を催すようになったが、まさか眠り込むことはあるまいと思い、立ち上がって外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとらずに続航し、いつしか居眠りに陥った。
 02時27分少し前B受審人は、南防波堤灯台から056度1.0海里の地点に達したとき、右舷船首13度1.0海里のところに進栄丸の白、白、紅3灯を視認することができ、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、居眠りしていたので、これに気付かず、進栄丸の進路を避けることなく進行中、金比羅丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、進栄丸は、左舷中央部ハンドレールに曲損を生じ、金比羅丸は、船首ホースビットに破損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、徳島県富岡港北方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、北上中の金比羅丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る進栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、南下中の進栄丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、徳島県富岡港北方沖合を単独で船橋当直に就いて帰航中、眠気を催した場合、立ち上がって外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか眠り込むことはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する進栄丸に気付かず、その進路を避けずに進行して同船との衝突を招き、進栄丸の左舷中央部ハンドレールに曲損を、金比羅丸の船首ホースビットに破損をそれぞれ生じさせるに至った。
 A受審人は、夜間、徳島県富岡港北方沖合を南下中、左舷前方の金比羅丸が、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で、自船の進路を避けないまま間近に接近するのを認めた場合、速やかに右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、いずれ金比羅丸が避けるものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、そのまま進行して同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。 


参考図
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