(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年6月6日18時58分
青森県須郷埼北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート ジー.エフ.ジー丸 |
登録長 |
3.40メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
7キロワット |
3 事実の経過
ジー.エフ.ジー丸は、最大とう載人員が3人の軽合金製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、青森、秋田両県の県境付近の海岸近くの岩場に渡って7人の釣り仲間とともに釣りを行う目的で、平成13年6月6日06時30分秋田県大鉢流山山頂626メートル(以下「大鉢流山」という。)から311度(真方位、以下同じ。)2,675メートルの地点の海岸(以下「発航地点」という。)を発し、発航地点の西方200メートルばかりの岩場に2人と1人に分けて、その後発航地点の北方500メートルばかりの岩場に2人ずつ4人をそれぞれ渡した。
A受審人は、発航地点西方の岩場のグループに入って釣りを行っていたところ、釣果がないので他の岩場に移ることとし、12時ごろ同岩場から1,700メートルばかり南下し、大鉢流山から270度2,250メートルの地点の岩場へ移動した。
A受審人は、18時ごろコブダイなど2キログラムを獲ったところで釣りを終了し、その旨を発航地点北方の岩場のグループに連絡して帰途の準備を行い、まず一緒に移っていた3人を発航地点に戻すこととしたが、2回に分けて運ぶなど乾舷の確保に対する配慮を十分に行うことなく、海上は平穏なので大丈夫と思い、最大とう載人員を超える4人で、全員がライフジャケットを着用して、同時40分前示岩場を発して発航地点に向かった。
A受審人は、1人を右舷船首部に、2人を中央部両舷に座らせ、自身は右舷船尾で操船に当たり、18時53分大鉢流山から288度2,250メートルの地点に達したとき、針路を350度に定め、機関を微速力前進にかけて1.7ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、18時58分少し前船首部にいた1人が、同部左舷側に取り付けた防舷材の係止ロープがほどけたのに気付いて同ロープを直すため前方に移動したとき、船首部が沈下して海水が舷側を越えて流入してきたのを見て大声を上げたので、機関を停止したところ、船首部が更に沈下して大量の海水が船内に流入し、18時58分大鉢流山から294度2,400メートルの地点において、ジー.エフ.ジー丸は、原針路のまま、停止状態で水船となった。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
その結果、ジー.エフ.ジー丸は転覆して全員が海中に投げ出され、それを目撃した地元漁師に救助され、のち発航地点北方の岩場のグループも全員地元漁師に救助された。
ジー.エフ.ジー丸は、地元漁師の漁船係留地に転覆状態で引き付けられたが、損傷はなかった。
(原因)
本件安全阻害は、青森県須郷埼北方沖合において、釣り場を発航する際、乾舷の確保に対する配慮が不十分で、最大とう載人員を超える人員を乗せて航行中、船首から舷側を越えて海水が流入し、転覆したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、青森県須郷埼北方沖合において、釣り場から釣り仲間を乗せて釣り場を発航するにあたり、自身を含めると乗船者が最大とう載人員を超える場合、乗船者を分けて運ぶなど乾舷の確保に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、海上が平穏なので大丈夫と思い、乾舷の確保に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、最大とう載人員を超える人員を乗せて航行し、船首から舷側を越えて海水が流入する事態を招き、転覆させるに至った。